糖尿病

成人病を考える

糖尿病は初期には症状が現れません。しかし気づかぬうちに病気は進行しています。健康診断などで 早期発見を!!
 糖尿病は現代病、あるいは文明病などと言われ、年々増える傾向にあります。
 糖尿病は、成人病の一つで、男女ともに40~50歳代で最も多く発症しています。運動不足、ストレスが多い、会食やアルコールを飲む機会が多い、など、糖尿病の危険因子が多いのがこうした年代といえるでしょう。

症状と原因

 糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用不足によって起こる病気です。インスリンは血糖値を低下させる働きを持っています。主な症状には全身倦怠感、体重減少、多尿、のどの渇きなどがあります。特にのどの渇きは夜中に何度も目が覚めて水を飲んでしまうほど強いものです。糖尿病にはインスリンの膵臓からの分泌が悪く、絶対量が不足するインスリン依存型糖尿病と、インスリンの分泌量はある程度あっても細胞にインスリンが作用していくうえで、その機能が低下しているというインスリン非依存型糖尿病の二つのタイブがあります。インスリン依存型糖尿病は小児期や青年期に発症し、ウイルス感染や自己免疫が関係しているのではないかと考えられています。
 糖尿病を誘発する原因には、次のようなものがあります。
 ①多食  ②運動不足  ③肥満  ④ストレス  ⑤遺伝
 ①の多食と②の運動不足は、結局は③の肥満につながります。糖尿病の患者さんが、今やせていても以前は太っていたという人がほとんどなのです。
 通常食時で接取した余分なエネルギーは、脂肪となって脂肪細胞に蓄えられて大きくなりますが、すでに大きくなった脂肪細胞ではインスリンの働きが低下するため、血液中のブドウ糖が増え、血糖値が上がり、糖尿病になるのです。
 ストレスも大きな要因です。精神的ストレスが強くなるとインスリンの働きも悪くなります。また、糖尿病には体質的な遺伝が関係しており、両親のどちらかに糖尿病がある子供の3人に1人、両親ともに糖尿病がある場合は、8割程度が中年期以降に発症しています。

糖尿病を発見するには

★血糖値の検査と尿検査
 糖尿病の検査は、血糖値の検査と尿検査によります。
 血糖値は空腹時で、健康な人の場合、血液100ml中80~110mgですが、糖尿病の人では、140mg以上と高い数値が出ます。
 空腹時の血糖値の検査に続いて、ブドウ糖負荷試験という検査を行ないます。これはブドウ糖を飲み、一定の時間ごとに採血して血糖値を検査するもので、インスリンが正常に分泌され、働いているかを調べるものです。
 これらの検査と並行して、尿に糖が出ていないかどうか、尿検査も行ないます。尿も血液と同様に一定の時間ごとに採尿します。 尿に糖がでるしくみ図
★わずかな自覚症状を見逃さずにチェック
 糖尿病は、初期の段階では自覚症状がほとんどみられないのが特徴です。いいかえれば、自覚症状が現れた場合は、ある程度症状が進んでいるということになります。血糖値が高いままの状態が続くと、突然合併症が現れて、それによって気付くこともあります。何よりも早期発見を心がけたいものです。

基本的な治療

 糖尿病の治療の基本は、毎日の食事や運動で血糖値をコントロールすることであり、これを継続していくことが大切です。
 次にあげる注意点に留意して普段からの自己管理を心がけましょう。
①正しい知識を持つ
 糖尿病や合併症の正しい知識を身に付け、治療の大切さを知ることです。
 特に合併症については注意が必要です。
②食事療法
 食事療法は糖尿病の治療には最も大切なもので、患者さんの50%は、食事療法だけで血糖コントロールができます。
③運動療法
 無理のない運動を毎日続けることが大切です。毎日7000歩以上歩くだけでも効果が現れます。簡単で毎日続けられることから始めましょう。
④体重測定
 肥満にならないよう、また正常な体重に近づき、維持するために毎日チェックしましょう。
⑤定期検査
 会社で行なわれる健康診断もしくは病院等で、定期的に血糖値や尿検査、あるいは合併症の検査を受けましょう。

注射や薬による治療

 食事療法や運動療法でも血糖値のコントロールがうまくいかない重症の人、もしくは、もともとインスリン不足のインスリン依存型の患者さんは、インスリン注射や内服薬が必要になります。インスリンを体外から補う治療法ですが、低血糖にならないよう十分な注意も必要です。

合併症について

糖尿病により全身に現れる障害
糖尿病により全身に現れる障害図
合併症は放置すると必ず進行する。
自己管理とともに、定期的な検診を受ける。  糖尿病の合併症は、血管障害、神経障害、昏睡の三つに大別されます。
①血管障害
 糖尿病の合併症に特徴的なのは細い血管の障害で、網膜症や腎症などがあります。特徴的ではありませんが、太い血管に動脈硬化などの障害が生じ、これにより心筋梗塞、脳梗塞などが起こることもあります。
②神経障害
 運動神経、知覚神経、自律神経の伝達機能に支障が起こり、その結果、筋力の低下、神経痛、知覚麻痺、消化器の機能低下による下痢・便秘、残尿、インポテンスなどさまざまな症状が出てきます。
 また知覚麻痺のため外傷に気づかず、化膿して壊疽を起こすこともあります。
③昏睡
 尿中に大量の糖を排出するとき、水分が必要なため、尿の量が増えると、体は脱水状態になっていきます。一方、インスリン不足のためブドウ糖をエネルギー源に利用できず、かわりに脂肪を分解します。このときケトン体という物質が大量に血中にたまり、血液は酸性化します。この双方が関係し、ひどくなると昏睡状態になり、死に至ることがあります。
 また、インスリン注射や経口血糖降下剤で治療している人が、インスリンや薬の量を多くしすぎ、低血糖になり、やはり昏睡状態になることがあります。
 合併症の発症や進行を遅らせるには、血糖値を初めとする糖尿病の管理を行なうことと、定期的な検査で早期に発見することが望まれます。
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食事と運動

 糖尿病では、食事療法と運動療法が欠かせません。薬や手術による治療と違い、これらは患者さんが自覚して行なつていくものです。食事療法と運動療法の必要性をよく理解し、毎日続けていくのが大切です。
★食事療法のポイント
〈1日1400~1800キロカロリーが目安)
 食事の総エネルギー(ブドウ糖)を、インスリンの力で処理できる範囲内に抑制することが食事療法のポイントとなります。これは人によって違うので、医師に適正な量を指示してもらう必要があります。そして決められたエネルギー内で、栄養のバランスをとることが大切です。
 動脈硬化を防ぐ効果のある、植物油や魚などに含まれる不飽和脂肪酸や、血糖値の抑制、コレステロールの吸収を押さえるのに効果のある繊維質などは意識的に摂取したいものです。逆に控えなくてはならないのが塩分です。1目10グラム前後に減らしましょう。糖尿病に多い肥満・高血圧の人はさらに減塩しなければなりません。
 アルコールは多少ならかまいませんが、ビールよりウイスキーや焼酎にします。ただし合併症の徴候が出たら禁酒です。 糖尿病の改善
  

自分でできる尿の検査

 血糖値の検査を受け、「少し血糖値が高めなので注意してください」といわれる人が、特に中高年の人に見られます。こういう場合は、医師の定期検査と併せて、自己管理のために自分で尿の検査をするのもよいでしょう。尿検査のための試験紙があるので、紙の先に尿をつけて色の変化で判断します。
 ただし、注意したいのは、紙をひたす時間によって反応の仕方が違うので、検査法を医師にしっかりと習ってから行います。また、これはあくまで自己管理の手段ですので、勝手に判断して、定期検査を受けるのをやめてしまったり、自己管理を怠ることがないようにしましょう。
  ★効果的な運動療法
 適度な運動を持続していくとインスリンの働きが良くなることが分かっています。また運動することにより、糖を燃焼させ、血糖コントロールを助けたり、肥満の解消を促します。
 運動療法は、定期的に続けることに意味がありますので、取り組みやすい運動が一番です。いつでもどこでも独りでできる軽いジョギングや速歩きなど、自分に合った運動を見つけましょう。またインスリン注射などをしている人は、運動によって低血糖になることもありますので十分な注意が必要です。
 運動は、血糖値が高くなる食後1~3時間以内に行うのが理想です。
ごはん1単位に相当する運動量

糖尿病の心得

1、何よりも一番効くのは食事療法
2、ゆっくり食べよう、よく噛んで
3、おっくうがらずに体を動かし、早歩きを30分
4、週に一度は体重チェック、体重増えれば糖も増す
5、忘れずに月に一度は血糖値をチェック
6、血圧・脂肪も正常に
7、低血糖、ならぬ注意と治す方策
8、年に一度は余病の検査




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