狭心症・心筋梗塞の危険因子

Q、狭心症や心筋梗塞の危険因子について教えてください。
A、狭心症や心筋梗塞などの冠状動脈疾患の原因となる因子 (リスファクター)には、いろいろなものがあります。順番にあげてみましょう。
(1) 高血圧
 冠状動脈疾患に対して高血圧はきわめて重大な危険因子です。高血圧は心筋に対する負担を増して酸素需要を高め、酸素の需要関係に不均衡をもたらし、狭心症の発症を誘発します。また、間接的には、コレステロールやLDL-コレステロールといって脂質を、血管内の圧力で動脈の内壁に押し込み、それが動脈の中層て粥状に沈着すると、アテローム(粥状)硬化という動脈硬化を起こします。こうして、高血圧と動脈硬化の悪循環ができ上がって、ますます動脈硬化が促進されるため、高血圧の人は健常人よりも冠動脈疾患にかかる率が高くなるのです。
(2) 高脂血症青身の魚
 高脂血症とは、コレステロール、中性脂肪、飽和脂肪酸の血中濃度が高い状態をいいます。食生活の欧米化にともない、血清コレステロール値の高い人が増えています。コレステロールには善玉(よいコレステロール=HDLコレステロール) と、悪玉(悪いコレステロール=LDLコレステロール)があります。HDlコレステロールが多いほど動脈硬化が防止され、LDLコレステロールが多いほど、動脈硬化が促進されます。卵、バタ-、動物性脂肪、イカなどには悪いコレステロールが多いので、摂取量を減らし、イワシやサバなどの青身の魚には“善玉”のコレステロールを増やす要素があるので、積極的に食べるようにしたいものです。
(3) 肥満
 肥満は、高脂血症や糖代謝異常を引き起こしやすく、冠状動脈硬化の大きな因子の一つです。つまり、脂肪過多の人に心筋梗塞が多いのです。脂肪が多く、体重が重いと、心臓は重い分だけ多く動かねばならず余計に働く分だけ肥大します。しかし、心臓が肥大しても冠状動脈の太さは一定なので、肥大したために、より大量の血液を送らなければならなくなります。これだけでも心臓はかなり無理をして働くことになります。今、身長百六十㌢の人が、体重七十五㌔まで太ったとすると、この人の標準体重は(160ー100) ×0・9式で計算して、五十四㌔ですから、二十一㌔超過、標準体重を約三十九%オーバーしていることになります。標準体重の十%以上を肥満といっており、これは明らかに太り過ぎです。できるだけ運動量を増やし、食生活の改善をはかり、自己の標準体重を守るよう努力しなければなりません。
(4) 喫煙
 喫煙は虚血性心疾患に対する重大な危険因子の一つで、多くの疫学的調査において、喫煙者は虚血性心疾患の罹患率および死亡率が、非喫煙者に比べて高いことが明らかになっています。一日二十本以上の紙巻きタバコ喫煙者は、心筋梗塞発生の危険度が非喫煙者の三倍も高いのです。これはタバコの中のニコチンが血管を収縮し、血圧を上げるからです。また一酸化炭素の作用は 細い血管や心筋組織の酸素供給を妨げ、酸素不足状態をつくり出します。こうした組織の酸素不足状態は、血管にコレステロールの沈着を促し、動脈硬化を促進させる結果となります。また、喫煙者は非喫煙者より血中のHDLコレステロールの値が低いという結果が出ていますが、これも動脈硬化を促進する一因となります。
relax(5) ストレス過多
 連日、強度のストレスにさらされていると、血圧が上昇します。血圧が高くなれば、それだけ心臓の仕事量が増し、負担がかかり、動脈硬化を促進させることになります。一方では性格的な要素も関係があり、いわゆるA型のひとは生活様式を変えてみるのも一案でしょう。
(6) 心電図異常
 左室肥大、ST~Tの変化、伝導障害があると、三~五倍の頻度で虚血性心疾患が発症しています。
(7) 糖尿病
 糖尿病の人には、全身の血管障害が合併しやすいことがよく知られています。統計では、糖尿病患者の死亡例の四十一%が血管障害で死亡し、死因の第位一位を占めています。冠状動脈疾患は、糖尿病にかかって十年以上たったころから急に増加する傾向があり、しかも冠状動脈の病変は重薦のことが多く、急性心筋梗塞を起こしても、全く胸痛を訴えないことがあります。
(8)高尿酸血症・痛風
 足指の関節に尿酸ナトリウムがたまって激痛を起こす痛風も、冠状動脈硬化の促進因子の一つです。高尿酸血症の人は冠状動脈疾患の発生率が二倍も高いという調査結果があります。
(9) その他
 遺伝的要因、運動不足、加齢などが危険因子としてあげられ、これらの合併が多ければ多いほど、冠状動脈硬化が起こる危険性が高いといえます。





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