うつ病

心がふさいでいませんか?不安がつのっていませんか?
  それらが病気へと発展する前に対処しましょう。
子供のうつ病子供のうつ病子供のうつ病
 一般的に子供が苦しんでいるときに出すサインとして、表にあげられたようなものがある。
 小児、特に乳幼児は言語表現が十分でなく彼ら自身が自分の苦しみ・悩みを他の人に適当に伝えることができないことも少なくないので、周囲の人間が彼らを観察し彼らの苦悩を推し量るしかない。
 普段から「彼らのように身体を使って語る子供」の訴えに耳を傾ける習慣を身につけたい。
苦悩のサイン
①生態心理学的症状  倦怠感、疼痛、食欲や睡眠の障害
②愛着行為の増加  まといつき、過度な欲求、分離不安の高まり
③退行現象  指しやぶり、会話・排尿・排便の退行
④消極性  絶望感、無力感
⑤疾病やその経過についての忌まわしい幻想  罰をうけている意識、不具や身体の損傷への恐怖
⑥苦悩そして防衛体制  拒否、恐怖徴候、転換症状
⑦それ以前の精神的徴候の鎮静、あるいは悪化
うつ病になりやすい性格
 メランコリー親和型が多い。メランコリー親和型とは仕事と対人関係における几帳面さが基本的特徴である。対人関係には誠実、奉仕的で摩擦を避け、他人との円満な関係を持つように気を使う人である。
うつ病になりやすい性格 仕事面では非常に綿密で、整然として的確に仕事をするようにしている。また、過度に良心的で敏感で罪に陥る不安が強い。執着性格と同質のものである。このような性格は一般的に生き方にゆとりがなく、趣味もなく真面目一方であり、こうした人は加わるストレスはますます多い。
 ある範囲のことは有能にこなせるが、仕事量の増加や環境の変化に適応しにくい。徹底的にやらないと気がすまないため、質、量ともにこなそうとして負担が重くのしかかる。そして、疲労や睡眠障害がおこつてくる。そして、そのような状態でもさらにがんばつて能率の低下を努力でカバーしようとする。その結果、疲労がますます強まり、うつ病を発症することになる。
 うつ病の発症は簡単に図示すると図のように考えられる。
うつ病の発症
性格
メラランコリー性格 
執着性格
 ストレスの強さ・持続 
現代社会における 
自分の課題
各種
 ストレス病の発症
(うつ病)
仮面うつ病
 身体症状を全面にあらわすうつ病を、仮面うつ病といいます。頭から足の先まで多彩な症状が見られ、症状の部位によりあらゆる診療科を受診することになります。好発する三大症状は「睡眠障害」「全身倦怠疲労」「全身のいろいろな部位の疼痛」である。
 「睡眠障害」は、ほとんどが不眠を訴え、その内容は眠りが浅くしばしば途中で目が醒めて、しかも朝早く目覚める。つまり熟眠障害、中途覚醒、早期覚醒で、目覚めた時に十分睡眠をとったという感じがなく、したがって目覚めたときの気分が極めて不快である。全睡眠障害が短縮し、ひどくなると普段の半分以下になったりする。このような不眠の症状が続くと日中の仕事にも悪影響がおよび、仕事場のミスや能率の低下を招いたり集中力が欠けたり、決断力が低下したりする。
 全身倦怠や疲労も重要な身体症状と考えられる。これは、エネルギーの喪失に基づく症状である。この疲れは単なる過労ではない。うつ病では、休息に加えて感情を調整する抑うつ薬を服用しないと、その症状は、緩和されない。
仮面うつ病 その疲れをとるためにビタミン薬を服用したりアルコールを飲用したりしてもうつ病に由来する全身倦怠や疲労には無効と考えられる。うつ病では一般に症状が朝の起床時や午前中にみられるのが特徴である。全身のだるさや疲れも午前中に強く、夕方や夜になると比較的和らぐことが多い。また、全身のいたるところに痛みが出現しやすいこともうつ病の症状である。頭痛、胸痛、腹痛、背部痛、四肢痛など様々な部位にあらわれる。
愁  訴 例数
睡眠障害 52 21.0
全身倦怠疲労 40 16.0
各種疼痛 21 8.7
頭  重 20 8.1
食欲不振 18 7.3
め ま い 17 6.9
動  悸 13 5.2
悪  心 10 4.0
首筋のこり 7 2.8
肩 こ り 5 2.0
体重減少 5 2.0
そ の 他 40 16.0
うつ病発病の原因
 メランコリー性格や執着性格の人に転勤、転職、転居、子供の婚約や結婚、近親者の死亡などのストレスが加わった場合にうつ病がおこりやすい。働き盛りのサラリーマンの場合、事業とか勤めに関連したストレスとして、表2のようなものが誘因とされる。
 現代社会の価値観や文化の多様化、家庭構造の変化、国際化、マルチメディアなどによって、壮年期の課題は様々である。壮年期は現代においては、第2の人生の出発点である。この期間をどのように乗り切るかによってその後の老年期のあり方は大きく影響される。ストレスを慢性化させない対処法を各自工夫する必要がある。
誘因となり得るもの勤めや事業の関連
①職場が変わる 〈転職・転勤・出向など)
②栄転や以外の抜擢
(スカウトおよび自分からの売り込みも含む)
病気や事故などによる欠勤③重い責任や晴れがましい役目
④職場の価値基準や方針の急変
⑤思ったより低い評価
⑥意地悪上司・誤解・陥れられ・疎外など
⑦良心にそむく任務
⑧病気や事故などによる欠勤
⑨長めの欠勤後の再出勤
重く長めの任務⑩重く長めの任務の一段落
⑪予定通りはかどらない(期限の切迫)
⑪まずい結果(部下の失敗などを含む)
⑪昇進試験(特に中年者)
⑭研修訓練(特に中年者)
⑯全例の乏しい職務
⑯単身赴任
⑰勤め先の解散や合併(特に被合併)
⑭仕事関係の情勢の急変
⑯定年およびその近づき
空の巣症候群
 青年期に入っている子供達が進学、就職、結婚などで独立していき、夫は仕事や趣味で多忙であったり、単身赴任で不在がちになり、それまでに多忙だが、充実していた家庭の様相が変わり、喪失感、空虚感、孤独感などから抑うつ感情が出現した状態である。こうした状態は母親だけでなく、同様な状況の父親にも当てはめられる。
 中年期の危機は対象の分離、喪失や自己のアイデンティティの危機などが体験されるが、それをどのように乗り越えていくかが重要な課題である。
空の巣症候群 空の巣症候群を予防するためには、様々な事柄に関心を向け広い社会的な視野や活動範囲を持つことで、仕事や趣味を充実させることが、症状予防の上で有効と考えられる。
 また、世代の確立のため、個々の生育歴の検討や個々の依存関係を客観的にみつめ、関係の在り方を認識、受容し、整理再統合することなどで視点や役割の転換を図り、家庭関係や社会との関係を良好に保つことも必要である。
 そのためには、身体の健康管理を図ることも精神的な健康を支える上で不可欠な問題であると考えられる。
 そして、以上のことをサポートするためには、まず現実的な子供や夫との葛藤、また患者自身の葛藤などを処理していくことが必要であり、患者を取り巻く家族、社会環境、また医療、相談施設などがその抑うつ的な状態を理解し、受容、支持的な協力をすることが重要である。
 空の巣症候群は、主婦が中年期の危機にライフイベントの1つとして体験しやすい症候群である。空の巣状態の予防や体験を通して、個々が新しい自己実現を図ることは、この後のより充実した老年期を迎えるために重要なことと考えられる。
上昇停止症候群
“上昇停止症候群“とは、厳密な医学用語ではないが、このような『上昇停止体験』を中心とした中年期の危機的な心理状態をうまく表わしたジャーナリズム用語である。それは、青年期以来、「年をとるにしたがって社会的地位が上昇し収入が多くなり、評価も高くなって家庭も幸せになる」という思い込みのもとに払ってきた努力が、病気への罹患、肉体の衰えの自覚、仕事の上でのつまづき、家庭生活の問題の露呈などをきっかけとして突然色褪せ、その思い込みが破綻することによって生ずるうつ状態、無気力感、心身の不調をいう。
 気がついたら、自分の人生はもはや上昇中ではない。老眼となり、体力も衰え始め、病気や死は他人事ではなくなった。職業上の成功、出世も先が見えている。家庭でも、夫婦、親子間の会話が表面化しない。このように青年期以来自分を支え、そのために営々と努力を積み重ねてきた価値観が音を立てて崩れていく。全能感が消え失せ、人生が無価値、無意味のようにさえ感じられる。この挫折感の結果として、あるいはこの挫折感の回避、挫折から逃避して、うつ病・神経症などの精神疾患、アルコール症などの行動化、消化性潰瘍などの心身症に罹患するものが『上昇停止症候群』であると理解できる。
楽しみを
東川島診療所 三村圭実





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