見逃せない子どものストレス

◆ストレスは必ずしも悪くない

 「ストレス」という言葉は、どうも使われすぎているような気がしてなりません。子どもに対しても、ちょっとイライラしていたり幼稚園や学校に行きたがらないと、すぐストレスのせいにしてしまうといった傾向がうかがわれます。そして、何とかストレスを解消してあげなければなどと考えるのです。
 でも、この世に生きている限り、ストレスは大なり小なりついて回るもの。そのすべてを回避できるはずはありません。むしろ、人は、ストレスに悩み苦しみながら、それを乗り切って成長していくことのほうが多いのではないでしょうか。
 ですから、子どもだからといって、一切のストレスがないように、大人が保護を加えてばかりいたら、人間として成長できなくなる恐れが大きいと思います。もしかすると、最近の「キレる」子どもたちは、幼いときから失敗やケンカなど辛い体験をする機会を、あまりにも制限されてきたためかもしれません。
ストレスは抑圧から

◆深刻なストレスは抑圧からくる

 拒食症に陥った中二の女子の場合が、まさしくそうでした。彼女の親は、成績が落ちると劣等感に苛まれるからと嫌がる家庭教師をつけ、シカトやケンカを繰り返すグループのなかにいてはかわいそうだからと、友達からの電話を切り、手紙を開封しては破っていたのです。それでは、彼女が親の作る食事をとれなくなるのも無理ありません。
 また、家庭で暴れ出した高一の男子は、自分で自分を責めていたようです。彼は、親が求める徳目の「優しさ」を体現しようと、中学生までは人当たりよくやってきました。ところが親友と呼べる友ができないまま高校生になつて、その偽善と孤独に耐えられなくなったらしいのです。

◆ストレスがなさそうな子こそ要注意

 それでも、こういう子はまだいいでしょう。耐え難いストレスを爆発させることで、すっきりしたり、親や教師を反省させることもできそうです。
 しかし、それすらできない子は、大人の前ではひたすらストレスを隠そうとしているかにみえます。もし、そのストレスがたまりにたまっていったら、いつ、どんな大爆発が起きるか知れたものではありません。現に、人を殺すとか自殺する子に「良い子だったのに」という声がよく聞かれるのは、そうした事情を物語るものなのでしょう。

◆子に任せたいストレスのかわし方

ストレスのかわし方 そういうわけで、子どものストレスは、子ども自身に上手に対処していく方法を身につけてもらうのが一番かと思います。もちろん、大人が子どもに心ないストレスを加えるのは差し控えなければなりません。ですが大人の配慮は、時として、子どもにはかえつて重荷になりかねないからです。
 ただ、子ども自身のストレス対処法は、大人にとっては許容しにくいことが多いかもしれません。何しろ、要領のよさそうな少年少女に聞くと、その方法というのは、さぼる、眠る、ごまかす、逃げる、他人のせいにする、好きなことをする、といった調子。要するに「こだわらない」のがストレスのかわし方のようです。でも、これこそストレス対処の王道ではないですか。
 どうやら、いっそ、子どもたちに任せたほうがよさそうな気がしてきます。





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