高齢者の痴ほう症とケア

医者 ◎ 痴ほう症と生理的ぽけの違い
 最近では痴ほう症のことを「ぼけ」と呼ぶことがあります。しかし、年をとって物忘れがひどくなってくる、いわゆる生理的なぼけと、痴ほう症は区別されています。
 夕方になって、昼に食べた食事の内容を忘れるくらいは生理的「ぼけ」ですが、食事をしたことを忘れるようでは痴ほう症ということになります。
◎ 痴ほうの判断基準
 痴ほう症の診断の一助として知能テストを行うことがありますが、これはあくまでも参考にすぎません。もっとも大切なことは、日常の生活、例えば食事、排泄、入浴、着脱衣でどのくらい自立が破綻しているかということです。D痴ほう二人.gif
◎ 痴ほうの原因
 痴ほうの二大原因としては、脳血管障害とアルツハイマー型痴ほうの原因となる大脳の変性があります。日本では、元来、脳血管性痴ほうが多く、全体の半分以上を占めていました。しかし、栄養の改善と高血圧治療の普及で脳血管障害が減少し、それに伴う痴ほうも減ってきました。
一方、欧米で主流を成しているアルツハイマー型痴ほうは、現段階では、増えていないので、人口あたりの痴ほうの出現率は、減る傾向にあります。しかし、今後、高齢化が進行すれば、患者の数は増えていきます。
◎ 治療で症状が治まることもある
 痴ほうは外傷や炎症で起こることもあります。こうしたタイプは、原因となる病気を治療すれば治まることも多いのです。また、うつ状態になったために精神の活動が鈍くなり、一見痴ほうのようにみえることがあります。この場合も、うつ状態を改善することが大切ですから、専門家の素早い対応が大切です。
◎ 痴ほうの症状と問題行動D痴ほう.gif
 痴ほうのうち、脳血管性のものは、半身不随などで体の動きも衰えているのが普通です。しかし、アルツハイマー型は、初期の頃、体力があまり衰えていないので、症状や問題行動が激しくなるのが普通です。
 痴ほうの精神症状は、中核となるものと周辺的なものに分けられます。中核的なものは、脳の萎縮や血管障害による高度な記憶障害、失見当識障害、判断能力の障害であり、これは容易に元に戻りません。一方、周辺的なものには、意識障害を伴う譫妄が最も大変です。「泥棒が来ている」とか「戦争が始まった」などと興奮して騒ぐことがあります。
 意識障害を伴わない鹿状には、自発性の低下、精神活動の低下など多あります。「大声をあげる」「俳徊」などの問題行動もケアの困難性を高めます。Dうさぎ3
◎ ケアの心がまえ
今のところ決定的な治療薬はありません。栄養状態の改善など全身のケアが大切です。
 周辺症状の出方は、ケアによって大きく違います。
患者さんの人格の尊厳を傷つけないように、しかも、状態に合わせたケアが必要となります。症状の激しい期間は専門の施設が有用です。現在、痴ほう患者のグループホームも充実していく過程にあります。




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