漢方薬及びそれを構成する生薬は、中国最古の薬物書「神農本草経」や「傷寒論」等に記載されております。 漢方薬での治療に当たって、まず「証」を決定します。この「証」というのは、漢方薬がピッタリと適応する病態のことをいいます。そして、この「証」を決定するために、その人その人における体格、体力、病気の進行度合等患者の症候と生体の反応とを詳細に観察しなければなりません。 以上のことから、漢方製剤185処方の内、比較的体にやさしい薬「効き目が誰にでも判り易い上に副作用が極めて少ない17処方が配置販売品目として販売が認められています。 |
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17処方の効能と特徴 | ||
1.葛 根 湯 | ||
効 能 : | かぜの初期、鼻かぜ、風邪による頭痛・肩凝り。 | |
特 徴 : | 頭痛・発熱があって背筋がゾクゾクする風邪。ワープロや長距離運転の肩凝り・クーラーで冷え過ぎた上半身の凝り・温かいお湯で服用すると効果的。 | |
2.小青竜湯 | ||
効 能 : | くしやみ、鼻水、鼻炎。 | |
特 徴 : | くしやみ、鼻水で始まる風邪・花粉症、アレルギー性鼻炎。薄い水様の疾が多い咳、ゼイゼイいう咳。 | |
3.香 蘇 散 | ||
効 能 : | 胃腸の弱い人の風邪の初期。 | |
特 徴 : | 普段から胃腸・体力がすぐれない人の頭痛・発熱・悪寒などの風邪の初期。又、発熱がなくても、気分がすぐれず、頭の重いとき。 | |
4.桂 枝 湯 | ||
効 能 : | 体力が衰えたときの風邪の初期。 | |
特 徴 : | 発熱・頭痛を伴う風邪の初期に。又、汗がでて、体の弱っている人風邪や老人の風邪にも勧められます。 | |
5.小柴胡湯 | ||
効 能 : | 風邪の後の疲労感・食欲不振。 | |
特 徴 : | 風邪が長引いたり、こじれて口が苦く、むかついたりすっきりしないとき。 | |
6.葛根湯加川弓辛夷 | ||
効 能 : | 鼻閉、鼻炎。 | |
特 徴 : | 蓄膿症、慢性鼻炎、花粉症、アレルギー性鼻炎等で臭覚がなくなり、比較的濃い鼻汁のとき。 | |
7.麻杏甘石湯 | ||
効 能 : | せき、ぜんそく。 | |
特 徴 : | 強く咳き込み、喉が渇き、痰がつまって切れにくいとき。甘みがあり、飲み易いので、こどもの風邪、軽い小児喘息に良い。 | |
8.麻杏よく甘湯 | ||
効 能 : | 神経痛、筋肉痛。 | |
特 徴 : | 冷えからくる腰や膝の痛みや体を濡らした後の関節痛、筋肉痛に良い。 | |
9.よくい仁湯 | ||
効 能 : | 筋肉痛、関節痛。 | |
特 徴 : | 慢性化傾向の筋肉痛・関節痛で患部が熱っぽく、腫れて痛む症状に良い。ハトムギ茶や種子のヨクイニンはイボ取りの薬として有名です。 | |
10.麦門冬湯 | ||
効 能 : | 痰の切れ難い咳 | |
特 徴 : | のどが渇いて、声枯れ、のどに異物感のあるときに良い。麻杏甘石湯の作用が強すぎて、胃が重くなったり、食欲不振になる人に良い。 | |
11.安 中 散 | ||
効 能 : | 胃のもたれ、食欲不振、胸やけ。 | |
特 徴 : | 普段から胃腸が弱く、神経質な人で、消化不良、胸やけ、むかつきのある人。現代人のストレスからくる神経性胃炎や胃痛に良い。 | |
12.平 胃 散 | ||
効 能 : | 胃のもたれ、消化不良、食欲不振。 | |
特 徴 : | 食べ物や水が胃にたまり、消化力が弱く、ときには下痢を伴うようなときや、冷たいビールを飲み過ぎてお腹がはり、グルグルお腹が鳴るときに良い。 | |
13.大黄甘草湯 | ||
効 能 : | 便秘 | |
特 徴 : | 一般的な常習便秘や、特にお年寄りや、病後でりきむ力が弱っている人に良い。 | |
14.乙 字 湯 | ||
効 能 : | いぼ痔・切れ痔の痛み。 | |
特 徴 : | 大便が硬くて便秘ぎみのいぼ痔・切れ痔に、又、出血している時は一週間ぐらい服用すると、出血が止まります。 | |
注 意 : | 冷え性、妊婦の人には用いないこと。 | |
15.小建中湯 | ||
効 能 : | 小児虚弱体質、小児夜尿症、夜泣き、腹痛。 | |
特 徴 : | 虚弱体質の改善に、ひょろひょろした児童に良い。 | |
禁 忌 : | 吐き気、急性炎症がある時。 | |
16.中 黄 膏 | ||
効 能 : | 打ち身、捻挫。 | |
特 徴 : | 打ち身、捻挫などの熱をとり、痛みを和らげる。 | |
17.紫 雲 膏 | ||
効 能 : | ひび、あかぎれ、しもやけ、ただれ、軽度の外傷・火傷、じの痛み。 | |
以上の17処方です。 |
漢方製剤にも服用上の注意が必要です。 | ||
1.甘草を含む製剤 | ||
・一日量として甘草を2.5g以上含む製剤。 | ||
服用してはいけない場合 | ||
○アルドステロン症(体内でナトリウムと水分が過剰に吸収されて貯溜し、むくみや高血圧、心不全、ネフローゼ等引き起こす)の人。 | ||
○ミオパチー(脱力感、手足のふるえや麻痺)のある人、低カリウム血症の人。 | ||
次のような症状が現れた時は、ただちに服用を中止して医師と相談して下さと。 | ||
○電解質代謝異常「低カリウム血症、血圧上昇、偽アルドステロン症(ナトリウム・体液の貯溜、むくみ、体重増加など)」。 | ||
○神経・筋肉症状「低カリウム血症の結果としてのミオパチー(脱力感、手足のふるえや麻痺)」。 | ||
・一日量として甘草を2.5g未満含む製剤。 | ||
2.5g以上含む製剤と同じ注意が必要です。 | ||
2.地黄や大黄を含む製剤 | ||
・服用を避けるか慎重に服用する場合 | ||
著しく胃腸が虚弱な人の場合に胃腸障害(軟便、下痢、胃部不快感、食欲不振など)が起こることがあります。 | ||
3.附子を含む製剤 | ||
・服用を避けるか慎重に服用する場合 | ||
熱感のある人や肥満体質の人の場合に熱感、ほてり、発汗、しびれなどの症状が現れることがあります。 | ||
4.麻黄を含む製剤 | ||
・服用を避けるか慎重に服用する場合 | ||
著しく胃腸が虚弱な人の場合に胃腸障害(軟便、下痢、胃部不快感、食欲不振など)が起こることがあります。 | ||
・狭心症、心筋梗塞等の循環器系の障害がある場合。 | ||
「服用前の注意」・・・医師と相談して服用する場合 | ||
交感神経刺激剤との併用で動悸、頻脈などの症状が現れることがあります。 | ||
「副作用」・・・起こることのある副作用 | ||
不眠、発汗過多、頻脈、動悸等の自律神経症状。 | ||
5.桂皮を含む製剤 | ||
「副作用」・・・起こることのある副作用 | ||
発疹、かゆみ等の過敏症状。 |
1 漢方薬に副作用は無いか?(80才 女性) | ||
結論から言いますと副作用はあります。その副作用も「証」の違いによるものと、生薬の取り過ぎによるものが考えられます。 | ||
1.「証」の違いによるもの | ||
漢方薬は病名で薬を選ぶのでは無く、漢方医学から見た体質や症状(これを「証」とよびます)によって薬が選ばれます。漢方薬がその証に合わない患者に与えられますと、副作用が出やすいとされています。不快感、食欲不振、湿疹、下痢、胃腸障害などが主で命の危険や重大な後遺症につながるのは稀とされています。 | ||
2.ある生薬の取り過ぎによるもの | ||
勿論、人によって違いますが、ある生薬を取り過ぎると、その生薬特有の副作用が出ることがあります。 | ||
例えば | ||
甘 草・・・血圧上昇、顔や手のむくみ、体重増加、頭痛、手足の痙攣 | ||
地 黄・・・下痢、腹痛、胃部不快感、食欲不振 | ||
附 子・・・ほてり、発汗、しびれ | ||
麻 黄・・・胃腸障害、動悸、発汗 | ||
桂 枝・・・発疹、かゆみ | ||
などが知られています。 | ||
2 漢方薬は長く飲まないと効力がないか?(50才 男性) | ||
漢方薬でも急性の病気(風邪、痛み)に即効性のあるものもあります。又、体質改善の目的で服用する場合は、2週間分服用してみて、改善が見られない場合は証が合わないことが考えられます。少しでも改善が見られたら3ケ月は服用して下さい。 | ||
3 更年期だから、合成された新薬でない漢方薬で、体調を整えたい。(40才 女性) | ||
この女性の体格や体質により証をきめ、どんな症状が出ているかにより、勧める漢方薬が違ってきます。 | ||
・肩凝りがあって冷えのぼせのタイプには・・・桂枝茯苓丸やビタミンE | ||
・ほっそりして全身が冷えるタイプには・・・当帰芍薬散 | ||
・ぽちやりして水ぶとりのタイブには・・・加味逍遥散 | ||
あまり証にこだわらずに使用できるものでは実母散があります。 | ||
4 一般の風邪薬で眠く、頭が重くなる、漢方薬はないか?(42才 女性) | ||
眠くなるのは、配合の抗ヒスタミン剤(マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン等)や去痰鎮咳剤(デキストロメトルファン)等にある副作用です。 | ||
漢方薬としては、証に応じて服用して下さい。 | ||
さむけ ・・・葛根湯 | ||
鼻水、水様の痰・・・小青竜湯 | ||
鼻閉、濃い鼻水・・・葛根湯加川弓辛夷 | ||
せき ・・・麻杏甘石湯 | ||
5 体が細く、風邪がすっきり治らない、漢方で何かないか?(50才 女性) | ||
虚弱体質の人で、風邪がこじれて証として胸脇苦満のときは小柴胡湯が良いかと思います。又、初期には桂枝湯、香蘇散、慢性には柴胡桂枝湯をお勧めします。 | ||