7 病院・診療所から処方された医薬品について

高血圧についての相談がたくさんあります。
○最大血圧とか最小血圧というのはいったいなんだろう。
答え  最大血圧は、心臓がギュッと縮んで血液を押し出したときの圧なので、収縮期血圧ともいいますし、最小血圧は心臓が拡がったときだから、拡張期血圧ともいいます。
○血圧が高いとなぜいけないか。
答え  脳出血や脳卒中、それから心臓病とか腎臓病、そのほか、血管のいろいろな障害など、命とりになる重要な病気は、みんな高血圧に大きなかかわりをもっています。
○高血圧の一応の目安としては上が160以上か、下が95以上。
答え  WHOの基準で決めてありますが、あくまでも人が決めたもので高血圧という診断の根拠も、れ以上だと事故が起こりやすい、と言うことで、一応の線がひかれているにすぎません。
○高血圧の原因
答え  上も下も高くて原因の判らない高血圧を本態性高血圧と言っていますが、高齢の方では、動脈硬化のため、上の血圧だけ高いこともよくあります。
 又、塩分の取り過ぎも原因となります。食塩は水をとりこむ作用がありますから、からだを流れる血の量が多くなって、それだけ血管を圧迫することになります。
 それから、血管を収縮させる物質が体の中に増えるのではないか、という考え方もあり、血圧を上げる仕組みとか、食塩がそれにどう働くかというのは、ものすごく複雑で、たくさんの考え方がありますが、確かだというところまでは、まだいっていません。
○高血圧の薬はのみ始めたら(一生続けるつもりで)自分勝手にやめぬこと?
答え  高血圧の治療の上で難しいのは、症状のない人が大部分で病気だという認識がない人のほうが、実は、むしろ多いのです。そういう人はなぜ薬を飲まなければならないのか、体では理解できないのです。血圧の薬を飲んで血圧が下がれば、もう治ったと思い込んで薬を止めてしまうことがあります。ある程度、血圧が安定してくれば、飲まなくてもいいじやないかと思われますが、遅かれ早かれ、又血圧が上がってしまい、ひと月ぐらいの間でも、3分の1ぐらいの人が、元にもどってしまいます。
 むしろそのあと、脳卒中などを起こし易いといわれています。ただし、それは、ある程度、重症の人の場合です。医師の管理の元に薬の加減をすべきです。
○血圧が高くなる病気
答え  本態性高血圧や動脈硬化によるもののほかにも、非常にたくさんあります。
 腎臓の病気で、たとえば、腎炎でも血圧が上がりますし、それから、腎動脈が狭くなる病気があります。一つは動脈硬化で起こる場合、もう一つは、脈なし病で起こる場合があり、血管のいろんなところが狭くなる病気で、その状態が腎動脈に起こって、血圧が高くなるわけです。これらはいずれも手術して、高血圧を治す事ができます。
 もう一つは、いろいろな内分泌の病気ですが、これは数は少ないけれど、非常に大事なものです。脳下垂体とか副腎の病気で、クッシング病というのがありますが、顔がまるくなって、太って、糖尿があって、ヒフに赤いまだらができる病気で、ホルモンがたくさん出るために、そういう異常が起きると同時に血圧も上がります。
 それから、副腎に褐色細胞腫という腫瘍ができると血中にアドレナリンというホルモンがたくさん出て、血圧が高くなります。
 又、やはり副腎の腫瘍に、原発性アルドステロン症というのがありますが、はっきりした症状が少ないため、本態性高血圧となかなか区別がつかないことがあります。それも手術をすれば治ります。
○高血圧との付き合いは、恐れず、侮らず、塩を控え適度な運動を
答え  自分だけの判断で、気分がいいから薬を減らそうとか、副作用が心配で飲まないようにしようとかしますと、血圧が高くなった時、医者は、薬が効かなかったと思い、薬の量を増やしたりして、おもわぬ副作用が出てしまうことになります。
 主治医に気軽に相談して下さい。
○降圧剤の種類について
カルシウム拮抗剤
1・作 用 カルシウムイオンが血管壁の細胞に入るのを妨げる薬で、血管を拡げ血圧を下げる働きがあります。
2・副作用 過敏症、黄疸や肝機能障害、胸部痛、上腹痛。
3・起こることのある
  副作用
頭重、頭痛、顔面紅潮、のぼせ、めまい、熱感、動悸、血圧降下、胸部不快感、下肢浮腫、倦怠感、頻脈、発汗、悪心、食欲不振、胸やけ、便秘、下痢、口渇、脱力感、四肢のしびれ、筋痙攣、腫脹、皮膚の発疹、頻尿、味覚異常。
 ベーターブロツカー
1・作 用 交感神経に支配される体内の各臓器にはアルフー、ベーターレセプターという神経伝達物質の受容体があり、これらレセプターの働きを妨げます。心臓では心拍出量が低下し、そのため血圧が下がります。
2・副作用 過敏症状、涙液分泌減少、光線過敏症。
3・起こることのある
  副作用
低血圧、徐脈、末梢血行不全、房室ブロック、鬱血性心不全、紫斑病精神神経症状、消化器症状、気管支痙攣、呼吸困耗、肝機能異常、脱力感、疲労感、筋肉痛、脱毛等が現れることがあります。
ACE阻害剤
1・作 用 体内ではレニンという物質が関与して、アンギオテンシン1ができます。アンギオテンシン変換酵素の働きでアンギオテンシン2に変わると強力な末梢血管収縮作用を表し、血圧を上げる働きがあります。生体内でのアンギオテンシンの生成を抑制し、末梢血管を拡張させて血圧を低下させます。
2・副作用 皮疹、味覚障害で減量又は中止。
3・起こることのある
  副作用
腎機能障害、消化器・循環器症状、肝機能異常、発熱、筋肉痛、口渇咳、四肢のしびれ感、高カリウム血症。
中枢性交感神経抑制剤
1・作 用 脳幹部への受容体を刺激することで末梢の交感神経の緊張を抑制し、末梢血管を拡張させて降圧作用を示します。又、体内に水分が貯まりやすくなるため、サイアザイド系利尿剤と併用されます。
2・服用中の注意 中枢神経の抑制作用があり眠気が起こりますので、運転に注意します。又、この薬は突然服用を中止すると血圧が急激に上昇するリバウンド現象が起こりますので、服用を中断するのは大変危険です。必ず医師と充分相談して下さい。
3・副作用 起立性低血圧「たちくらみ」が起こります。過敏症状。メチルドパ製剤については、原因不明の発熱、肝機能障害血液異常「貧血、白血球減少、血小板減少」、ユリテマトーデス免疫異常症状。
4・起こることのある
  副作用
精神神経症状、循環器症状「起立性低血圧症、蒼白、レイノー症状」消化器症状、鼻つまり、体重増加、性欲減退、無月経。
アルファーブロツカー
1・作 用 交感神経のうちアルファー受容体を選択的に遮断することにより、血管平滑筋を弛緩させて血圧を下げます。
2・服用中の注意 起立性低血圧によるめまいがあリますから運転に注意します。投与初期には、急激な血圧低下で意識消失を起こすこともあります。
3・副作用 過敏症状。
4・起こることのある
  副作用
精神神経症状、循環器症状「起立性めまい、心悸昂進、頻脈」消化器症状、頻尿、陰萎、霧視、鼻閉、息苦しさ。
末梢性交感紳経抑制剤
1・作 用 直接血管平滑筋に働き、血管を拡張させて血圧を下げます。
2・服用中の注意 降圧効果によるめまいが起こりますので運転等には注意しましょう。
3・副作用 過敏症状、エリテマトーデス症状「発熱、紅斑、関節痛」血液異常「貧血、白血球減少、血小板減少、好酸球増多」肝機能障害「黄疸、塩酸エカラジンは劇症肝炎」
4・起こることのある
  副作用
精神神経症状、循環器症状「頻脈、心悸昂進、狭心症発作誘発、起立性低血圧、心電図異常」消化器症状、流涙、排尿障害、鼻つまり、リンパ節腫。
利 尿 剤
炭酸脱水素酵素阻害剤
1・作 用 腎臓の尿細管での重炭酸イオンの再吸収を抑制します。その結果、ナトリウムイオンの近位尿細管での再吸収が抑制されて、水の排泄が増加します。利尿作用に加えて、眼圧低下、脳圧降下作用があります。
2・副作用 過敏痘、血液異常、腎障害。
3・医師と相談すべき
  副作用
代謝異常
4・起こることのある
  副作用
消化器症状、精神神経症状、倦怠感、発熱。
ループ利尿剤
1・作 用 ナトリウムイオン、クロールイオンの再吸収を抑制します。最も強力な利尿剤で、服用後短時間に効果が現れ、量を増やすと利尿効果も高められます。
2・副作用 過敏症、血液異常、腎機能障害、肝機能障害。
3・医師と相談すべき
  副作用
ナトリウム、カリウム、カルシウム等の電解質失調や高尿酸血症、高血糖等の代謝異常。
4・起こることのある
  副作用
消化器症状、膵炎、めまい、頭痛、知覚異常、聴力障害、脱力感、倦怠感、起立性低血圧、筋痙攣等。
チアジド系利尿剤
 1・作 用 ナトリウムイオン、クロールイオンの再吸収を阻害して利尿効果を現す、遠位尿細管に作用する薬で、降圧利尿剤ともいわれています。
2・副作用 過敏症、血液異常。
3・医師と相談すべき
  副作用
低ナトリウム血症、低カリウム血症、低クロール性アルカローシス「体がアルカリ性になる症状」、血中カルシウムの上昇等の電解質失調や高尿酸血症、高血糖症等の代謝異常。
4・起こることのある
  副作用
肝炎、消化器症状、精神神経症状、眼症状「かすみ眼、黄視症など」呼吸器症状「間質性肺炎、肺水腫」。その他倦怠感、心悸昂進、鼻閉、筋痙攣。
アルドステロン拮抗剤
1・作 用 遠位尿細管から集合管に存在するアルドステロンというホルモンの受容体にアルドステロンが結合するのを防ぎ利尿作用を現します。
2・副作用 過敏症
3・医師と相談すべき
  副作用
代謝異常、女性のような乳房になってきた時は、薬の量を減らすかあるいは中止することで消失します。
4・起こることのある
  副作用
内分泌症状、消化器症状、精神神経症状、その他筋痙攣、倦怠感、心悸昂進、発熱、肝斑。

1 2年前から高血圧症で6種類の薬を服用、その後不眠となり別に薬を貰っている.胃の調子が悪く食欲不振で倦怠感がある.又、朝だけ、夜だけ、食間だけ、等服用の仕方がややこしい.飲み忘れたり怠けてきた.もっと判り易くならないか.(60才 女性)
答え  薬は一定量飲んで初めて効果があります。自己判断で減らさずに、医師に相談してみて下さ い。又、薬を飲み忘れたら余分に飲むのでなく、気がついた時点から飲み始めること。2回分を一緒に飲めば副作用が起こってくる危険があります。
 たくさん薬を貰うと、つい、どれだけの薬を飲めばいいか忘れてしまいます。一回に飲む量を確認して、朝、昼、晩、と一回に飲む分を小さな容器に入れて置けば、判り易いと思います。
2 病院からの薬には、使用期限は無いのか?      (65才 男性)
答え  病院からの薬は、患者の症状に合わせて医師が処方し、3日分、1週間分として、出しています。飲み忘れたりして、残った薬は、本来は無いはずの薬です。
 その薬を処方期間以後に服用しても、責任の所在がありません。又、処方期間内に服用されるのが前提ですから、残った薬は破棄して下さい。
3 病院から出された薬は全部飲まないといけないか?(60才 女性)
答え  医者は、患者が薬を全部飲んでいるものとして治療を続けています。自分の判断で薬の量を変えることはしないで、例えば副作用が現れるとか、効き目が強すぎるようなことがあったら、その事を医者に相談して下さい。
4 1日3回の薬は、必ず飲まなければならないか?(67才 女性)
答え  1日3回服用と決められた薬は、効果が1日中ある様に考えて出されています。薬の有効量を血液中一定濃度に保たなければなりません。1日分をまとめて服用すれば、副作用の心配があり、飲み忘れれば効果が期待できません。



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