タイプA型人間が心筋梗塞の標的

 ここでいうA型とは、血液型のことではありません。人間の性格を二つに分けて、活発な性格の人を「A型人間」、のんびり暮らすタイプの人を「B型人間」と呼んでいます。心筋梗塞は、このA型人間に圧倒的に多く発症し、社会的な問題となつています。

AタイプはBの七倍の発病率

1974年にアメリカの医師フリードマンとローゼンマンの両氏は、いちはやく人間の性格と心筋梗塞の関係に気づき、タイプA型人間(正確にいえば、タイプA行動パターン)の存在を提唱したのです。このタイブA型行動パターンを要約すると、

  ① 目標への持続的な強い衝動

  ② 競争を好み自ら求める傾向

  ③ 永続的な功名心

  ④ 時間に対する切迫感

  ⑤ せっかちな性格

  ⑥ 心身への著しい機敏性などです。

 そして、これらの反対の行動パターンをタイプBと呼んでいるのです。
 両氏の研究によれば、タイプA型人間には、タイブB型人間に比べ冠状動脈疾患が7倍も高率に発生していることが判明したのです。さらに8年間の追跡調査によると、タイプAはタイプBに対して、心筋梗塞の発症率が2倍以上もあるということです。まさしくタイブA型人間が、心筋梗塞の標的になつているのです。
 また、アメリカのK・A・フランク医師らも1978年に、A型行動パターンの傾向の強い人ほど、冠状動脈の硬化度が高度になることを冠状動脈造影によって証明しています。そればかりか、A型行動パターンは病変そのものを悪化させる作用をもっていることも報告されています。
 わが国でも、著者の冠状動脈造影による知験によっても同様な結果が得られています。
 ここで、タイブA型人間の代表選手ともいえるY氏をご紹介しましょう。
 Y氏は現在52歳で、ある大手商社の取締役。学生時代はラグビー部のフォワードを務め、体力には自信がある。アフター5には、かつてのチームメイトと街にくり出し、大いに飲み、論議をかわしたが、その癖が今も抜け切れない。こと仕事に関しては誰にも負けないことを自負している。時間に正確で会議に遅れることはない。人づき合いも良く、几帳面な仕事ぶりで取引き先からの信頼もあつい。良くいえば貴重な会社人間、悪くいえば仕事中毒、ワーカホリックといえます。
 Y氏はことのほか健康について関心も高く、健康に良いといわれることは何でも試みていました。水泳、ジョギング、テニス、ゴルフなど、ラグビー以外にもかなりの熱の入れようだったようです。こんなY氏が倒れたのは、日曜日の朝のジョギング中のことでした。救急車で病院に運ばれ、CCU(冠状動脈疾患集中治療室)に入院することになり一命をとりとめることが出来ました。診断名は急性心筋梗塞だったのです。



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