ポンプ死とリズム死

 突然死を原因別に分類すると、①心臓疾患②中枢神経疾患③大血管疾患の三つに大別されます。
 心臓疾患では、急性心筋梗塞、急性心機能不全(心臓麻痺)、心不全、不整脈などが直接の死因とされるものです。中枢神経疾患では、外傷などが見あたらない頭蓋内出血で、くも膜下出血や脳内出血がこれにあたります。大血管疾患では、動脈瘡破裂などが直接の死因となるものです。
 ここでは、心臓疾患による突然死に焦点をしぼってお話ししましょう。心臓突然死の起こり方を分析してみると、一つは心臓のポンプとしての機能の低下によるもので、いわゆるポンプ死があります。二つめは心臓麻痺といわれるもので、急性心機能不全死です。これは、心室細動や急性心停止によるリズム死(不整脈死)であるといえます。
 心臓はそのポンプ作用により全身および肺に血液を送り出しています。このポンプとしての機能が急速に低下すると死に至ります。心臓の壁は筋肉でできているため、ポンプ死の主な原因は、急性心筋梗塞であり、身近なところでは、かぜ症状で発症する心筋炎のような炎症性疾患です。
 心筋に栄養を送り込んでいる冠状動脈の硬化により、内腔が狭くなり、さらに閉塞すると心筋は完全な酸欠状態におちいります。一般に、三本の栄養血管のうち、右冠状動脈が閉塞すると、下壁梗塞、前下行枝が閉塞する前壁梗塞、回旋枝が塞がると側壁梗塞が起こります。いずれにせよ、収縮する筋肉は死滅し、心臓のポンプとしての機能が失われるのです。心筋梗塞の範囲が大きいほど、ますます心臓は弱ってしまいます。これが心不全です。
 また心筋梗塞となった筋肉は、豆腐のようにもろくなり、心臓内の圧力に負けて、その部分で破裂を起こすこともあります。左室の前壁や後壁が破れれば、心臓をつつむ心膜腔に血液が出て、心臓を圧迫する心タンポナーデを起こします。心室中隔が破れると、急に右心室に血液が流れ込み、右心不全を起こします。僧帽弁をささえている乳頭筋の断裂が起きますと、左房内の血液が逆流を起こし、急性肺水腫となり、いずれの場合も急死の原因となりうるのです。
 ウイルスなどの感染による心筋炎の場合も、炎症が心臓全体に及ぶものもあり、ちょうど広範囲に心筋梗塞が起こつた時と同じ結果をもたらします。
 一方、リズム死(不整脈死)も突然死の原因としてポンプ死同様に重要です。致死的な不整脈としてあげられるのが、脱が遅くなる徐脈性不整脈と心室頻脈など、頻拍性のものがあります。また、心室細動に陥り、瞬時に心停止に至るものなどがあります。
 脈が遅くなる完全房室ブロックで、心室からでる拍動が毎分30以下になると、脳へ十分な血液がゆかず、急死する可能性が高くなります。この場合は、人工ペースメーカーを移植すれば、正常な生活を営むことができるようになります。



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