心臓チェックを忘れ急性心筋梗塞

心臓チェックを忘れたばかりにマラソン大会初挑戦で倒れた

 寒さが和らぎ、しだれ柳の枝が緑にそまる頃、今年も関東地方の早春をかざる、恒例の市民マラソン大会が行われました。A氏(46歳)は、今年このマラソン大会に初挑戦したのです。
 風がやや冷たいものの、よく晴れた絶好のマラソン日和でした。マラソンのコースは42.195Km、街の中を通る平坦なコースと、起伏の多い丘陵地帯を駆け抜けるコースとが組み合わされ、体力配分が工夫されたコース作りがなされていました。千人以上の参加者が勢揃いし、スタートしました。
 健脚を誇るA氏は、自らに「マイペース、マイペース」といい聞かせながら、平坦な市街地を過ぎて行きました。丘陵地区のなだらかな坂道を、冷たい風を受けながら、ペースを落とさず駆け上がっていくと、息もかなりはずんできました。A氏は肥満のせいで、息苦しいのかなと思っていましたが、10Km地点を過ぎたところで、こんどは、冷や汗が額に渉み出し、めまいを感じ、次に食道の上部に焼けるような違和感を覚えたのです。
 そして、その数分後、突如、呼吸困難となり、遂に路上にばったりと倒れてしまいました。救急車で病院へ運ばれ、ただちにCCUへ入院となりました。幸い一命をとりとめることができましたが、診断は急性心筋梗塞でした。

マラソンやジョギング中の突然死が多い理由

 スポーツ中の急死を種目別にみますと、マラソン、ジョギングの頻度が最も高く、全体の約半数を占めているのです。ラグビー、野球、テニスなどの球技が15%、次いで水泳、登山、ダンス、格闘技と続いています。
 ジョギングやランニングは、予想以上にエネルギー消費量が多いのです。安静時のエネルギー消費量を一単位(1MET。METはmetabolismの略)とすると、時速3.2Kmの平地歩行で、2~3単位、時速8.0Kmのジョギングでは7~8単位、時速9.6Kmのランニングとなりますと、10単位のエネルギーを消費します。このようにランニングでは、平地歩行の3倍から5倍ものエネルギーが必要となり、それだけ心臓と肺の働きが重要なポイントとなってきます。
 動脈硬化が進み、心臓の栄養血管である冠状動脈にコレステロールが蓄積すると、血液の流れが淀み、狭心症を起こす原因となります。このような状況下で、ストレスや脱水症状などが加わると、コレステロールのまわりにできた血液の塊(血栓)により血液がとだえ、急性心筋梗塞で倒れることになります。
 A氏もこのような悪循環に陥り、心筋梗塞になってしまったのです。スポーツや運動競技を始める前のメディカルチェック、特に心臓のチェックがいかに大切かを示す一例といえるでしょう。



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