血圧が上昇すると悪循環に

 血圧は、一般に年齢の増加とともに上昇します。原因が明らかでない、いわゆる本態性高血圧の多くは、30~40歳で発症します。高血圧があるだけでも正常血圧者に比べて死亡への危険度が高くなります。収縮期血圧が180あると、50歳未満では、正常血圧者の6倍、50歳代でも約2倍の死亡率です。
 しかし、ここで最も重要なことは、高血圧者、正常者を問わず、一過性に血圧が急に上昇した場合の心臓への影響です。
 口論したり、興奮したりするような精神的なストレスや運動などで、血圧は一日中、上がったり下がったりしています。一過性の血圧上昇は、血管の平滑筋細胞の収縮により生ずるのですが、これはノルアドレナリンのような血管収縮物質がストレスにより分泌されるからです。
 交感神経末端から放出された神経性の血圧調節物質であるノルアドレナリンは、まず血管平滑筋の細胞膜のアルファ(α)受客体に作用します。そこで、細胞外にあるカルシウムを細胞の中に流入させます。次に、細胞膜や筋小胞体というところに貯蔵してあるカルシウムを細胞内に遊離させます。このカルシウムの増加が筋肉を収縮させ、血管内腔を狭くして血圧を上昇させるのです。
 このノルアドレナリンは、心臓のベータ(β)受容体にも作用し、脈拍をあげ、心筋内の刺激の通過速度を速めます。また、心筋細胞内でもカルシウム濃度が増し、心筋細胞が強く収縮するようになります。このような状況下になると、心臓はバランスを失い、不整脈が出現します。
 血圧が上昇した場合には、左心室内の圧力も高くなるため、心内膜側の血流が低下して虚血状態を起こしやすくなります。心筋に血液を供給している血管に動脈硬化が生じているときには、一部の心筋が酸欠状態に陥り、不整脈は一層発生しやすくなります。
 このときに起こる不整脈は、心室性期外収縮が主体で、連続して出現すると、生命にかかわる心室頻拍や心室細動に移行することがあるのです。
 ストレスや精神的因子→血圧上昇→心室性期外収縮→突然死というように、一連の反応の流れがあり、この悪循環をどこかで断ち切らなければなりません。
その意味では、ストレスや過激な運動にさらされたとき、自分の心臓は耐えられるのか、また、どこかに欠陥がないかを、常日頃からチェックしておくことが重要となりましょう。
 そしてまた、日常生活においても、高血圧に対して予防的な方策を心がけるべきでしょう。過食、タバコやコーヒーの飲みすぎに注意し、ストレス、睡眠不足をさけるなど生活の工夫が必要です。
 血圧の上昇するメカニズムが心臓への負担をもたらし、不整脈や心筋梗塞を起こす危険があることをお忘れなく。



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