心臓病が知らないうちに浸透している

 九段内科クリニックで最近、心臓ドックを受診された100人について、検査内容を分析した結果を報告しましょう。
 100人のうち男性は66人、女性は34人でした。最も若い人は19歳、最年長者は80歳でした。年齢別にみてゆくと、10歳代が1人、20歳代が4人、30歳代が7人ですが、関心度が高い40代になると17人となり、50歳代が29人、60歳代がピークをなし33人と最も多くなっています。70歳代では8人、80歳代で1人となっています。

多発している無症状の心臓病

 発見された病名を(心臓病が見つかったケースについて)まとめてみると次のようになります。病名の頻度は、心筋梗塞があり、かつ不整腺もあるというふうに重複しているケースがあるため、総計は100を超えることになります。
 第一の虚血性心疾患は、心筋虚血(19)や労作性狭心症(16)など48例に認められました。 次に不整脈ですが、心室性期外収縮(25) や上室性期外収縮(12)など、これは五人例に認められました。
 第三は、弁膜症です。この疾患は大動脈弁閉鎖不全症(3)や僧帽弁閉鎖不全 (3) など、8例に発見されています。
 第四は心筋疾患ですが、こちらは肥大型心筋症(9)や二次性の左室肥大(4)など、15例に所見が認められました。
 第五は「その他の疾患」です。おのおの1例ですが、この中には多様な病名が含まれています。なお「異常なし」(正常者)の判定がでたのは6例でした。
 一方、虚血性心疾患のリスクファクター(危険因子)は、次のようになります。高脂血症 (39)\高血圧症(21)\糖尿病(7)\高尿酸血症(7)\肥満(7)\動脈硬化(13 )\喫煙(44)\家族歴(50)このリスクファクターの中で、家族歴、喫煙、高脂血症、高血圧症の頻度が飛び抜けて高いことに驚きます。
 心臓ドックで最も多く見つかった疾患は、心室性期外収縮です。25%、つまり心臓ドック受診者の4人中1人に不整脈があることがわかったのです。左室遅延電位(レートポテンシャル)が陽性の人は、一層その危険が高まると多くの研究者が報告しています。
 虚血性心疾患についてみると、100人のうち28人に労作性狭心症が証明され、10人に異型狭心症が明らかとなっています。しかし、予想をはるかに超えて、19人に無痛性心筋虚血が発見されたのです。
 これは、心筋に酸欠状態が起こつているのに本人は気づかない恐ろしい病気です。胸の痛みがなくても、狭心症と同じように心筋梗塞へと進展し、突然死の原因ともなるからです。そのほか、心臓弁膜症が8%に、また、心筋の疾患が15%に認められています。
 ここで、特に強調したいのは、虚血性心疾患のリスクファクターを保有している人が、いかに多いかということです。家族歴は別としても、喫應者が44%で、そのほとんどが男性です(41人)。また、コレステロール等の高い高脂血症が39%、高血圧症が21%、糖尿病7%、高尿酸血症が7%に認められました。
 なんらかの動機があって心臓ドックを受けられた100人の方々ですから、病気の発見率が高いのは当然であるといえましょうが、正常者がわずか6人で、94人もの方々が、このような異常を示されたわけです。このことは、心臓病が知らず知らずのうちに、現代人の生活の中に浸透していることを警告しているものとみてよいでしょう。




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