高脂血症とリポ蛋白

動脈硬化症の危険因子

 最近、健康診断や人間ドックで高脂血症の指摘を受ける諸氏が増加しています。眼瞼の鼻側に黄い斑点のような黄色腫を持つY氏(42歳) の総コレステロールは320mg/dl、中性脂肪130mg/dl、HDLコレステロール32mg/dlで、要精査、要治療の指示で来院したのです。
 高脂血症とは、血液(血清)中の総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪が増加した状態、またはHDLコレステロールが減少している状態を言います。高脂血症は動脈硬化症の危険因子であり、臨床上、大いに問題となるのです。
 血液中の脂質の正常値は、総コレステロールは150~219mg/dl、LDLコレステロールは70~139mg/dl、中性脂肪は50~149mg/dl、HDLコレステロールは40mg/dl以上です。
 身体の中では、コレステロールや中性脂肪は水に溶けませんので、その回りを水になじみやすいリン脂質や特殊な蛋白でおおわれた粒子となつて、血液の中に溶け浮いています。これを「リポ蛋白」といいます。
 このリポ蛋白は、4つのグループに大別されます。その一つは、カイロミクロンという腸から吸収されるリポ蛋白で、中性脂肪が非常に多く、比重が軽く大型の粒子です。二つめは、肝臓で作られ血液の中に多量に放出される大型で中性脂肪の多い粒子で、VLDL(超低比重リポ蛋白) と呼ばれるものです。このVLDLの中性脂肪は、筋肉や組織でエネルギー源として使われます。

悪玉・LDL値は計算できる

 中性脂肪を放出したVLDLは、LDL(低比重リボ蛋白)と呼ばれ、これが三つ目のリポ蛋白です。このLDLは、小型の粒子でコレステロールの割合が非常に多く、動脈硬化を起こす悪玉コレステロールと呼ばれているのです。四っ目のリポ蛋白は、HDL(高比重リポ蛋白)で中性脂肪とコレステロールが少なく、蛋白質が多いために比重が高くなつています。このHDLが血管の壁や組織から余分にたまったLDLを引き抜いて肝臓へ戻す役割を担っている善玉コレステロールです。
 絶食して採血すると、カイロミクロンは血液中にはほとんど存在していないので、検査で測る総コレステロールは、VLDL、LDL、HDLに含まれるコレステロールの総和を測っているのです。VLDLの中のコレステロール(すなわち悪玉のLDLコレステロール)は、総中性脂肪の5分の1であることが経験的に知られていますので、LDLは計算で求めることができます。Y氏の場合のLDLコレステロールは、
総コレステロール  HDLコレステロール  中性脂肪
    320-32-1/5×130=262mg/dl
 で非常に高く、狭心症を呈する冠動脈硬化症→心筋梗塞のルートを一直線に走っているのは確実です。





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