ヘルストラストへの誘い

低迷するサラリーマン世代の健康

 この数年ほど、サラリーマンにとって不安でストレスに満ちている時代はないでしょう。薄明かりの景気の中では将来の計画も覚束ない。このことは、何もサラリーマンだけではなく、経営者にとっても同じことと思われます。
 こういう時代には、体の免疫力、抵抗力が低下していて、知らず知らずのうちにいろいろな病気にさいなまれているのです。
 折りしも、人間ドックを受けた働き盛りのサラリーマン世代の健康の低迷ぶりが、社団法人日本病院会が実施した全国調査でも明らかにされました。
 昨年の人間ドックで 「異常なし」 と判定されたのは、わずか18%で、82%がなんらかの異常を示しているのです。なかでも肝機能障害や高脂血症の人が急増しているのが特徴です。
 それに、人間ドックで「異常なし」と判定された数少ない人々でも、「異常なしイコール健康」と思い込んでは間違い。
 いわゆる「人間ドック」では、心臓と脳の項目が抜けていて、最も重要な臓器の検査が盲点となっているのです。
 当院で、心臓を重点的にチェックする「心臓ドック」を始めたのは、そんな理由からです。成人病の多くは無症状に経過するので、気付いたときはすでに遅いということが少なくないのです。

揺籠から墓場までの健康管理

 私の診察室にも、いろいろな病気を持った患者さんが訪れます。最近では、専門医が巷に氾濫し、患者さんを全人的にトータルで診ることのできる医師が少なくなっているのは、残念に思います。
 米国オハイオ州のクリーブランドクリニックやカリフォルニア州にあるスタンフォード大学で学んだ最善で最良の医療を実践すべく、私は努力しております。PTCA(冠状動脈形成術)を日本に持ち帰り、高度先進医療の普及に努めたにもかかわらず、救えない患者さんがいることに腐心しました。そこで、”発病予防こそが医学の神髄である″を確信したのです。
 私が提唱している健康管理システムは、揺籠から墓場までを包括する系統的なもので、「ヘルストラスト構想」と呼んでいます。それは 「系統的なヘルスチェック」に加え、「主治医制度」「ライフスタイル・リノベーション」「生涯健康大学」の四本柱から構築されています。
 サラリーマンにとって健康は資本と言えるでしょう。日頃から健康を維持するためのリスク管理を心掛けてはいかがでしょう。
九段クリニック院長 医学博士 阿部博幸





inserted by FC2 system