不整脈の危険なサインを探る

たかが不整脈と侮ってはいけない

 突然、脈の乱れや動悸に襲われ不安になることがあります。これらの脈の異常は総称して不整脈と呼ばれています。
 不整脈を分類すると、
① 脈が速くなる頻脈性不整脈、
② 脈が遅くなる徐脈性不整脈、
③ 脈と脈の間隔が不規則になる期外収縮
の3つのタイプに大別されます。さらに不整脈が起こる場所により心室性と上室性(心房性)に分けられます。
 日常最も多く遭遇するのは、上室性期外収縮です。これは、若年者でもよく見られ、加齢とともにその頻度も増加します。この不整脈は自覚症状がないことが多く、危険性もほとんどありません。しかし、これが突然上室性額脈を起こし、低血圧やめまいの原因となったり、心房細動へ移行したりすると問題となります。心房細動では、左心房内に血栓ができることがあり、脳梗塞の原因となりとても危険です。心房細動が脳塞栓を起こす頻度は普通の5~6倍にもなります。
 心室性期外収縮もよく見られます。若年者では原因の特定は難しく、風邪やタバコを吸い過ぎたときにも見られます。心室性期外収縮も単発的に時々みられるときは、脈が抜ける状態になりますが、それほど危険を伴いません。しかし、この心室性期外収縮が三連発以上続く場合を心室性頻拍と呼び、低血庄や失神発作を起こし、致命的な心室細動へ移行する可能性があり非常に危険です。心房細動とWPW症候群の組み合わせも同様に危険です。

定期的な検診により変化に備える

 脈が遅くなる徐脈性不整脈に房室ブロックがありますが、心房の刺激が心室に伝えられないために起こります。老化現象としての刺激伝導系の線維化がその原因の一つと考えられます。一度から三度まである重症度のうち、最も重い三度の房室ブロック(完全房室ブロック)では脈は1分間に40拍程度となります。このときには、心室の刺激伝導系が作動するのですが、ただちに対応できない場合には拍動が止った状態となり、これが7~8秒間続くと失神発作を起こし意識を失い、入浴中や運転中の事故につながります。
 通常どのような不整脈が起こつているのかを知ることができるのは、発作時の心電図を記録する以外に方法はありません。その目的で開発されたのがホルダー心電図(24時心電図) です。また、心室頻拍・心室細動の危険を予知する方法として、心室遅延電位記録 (レートポテンシャル) があります。
 最近では、電気生理学的研究も進み、薬剤治療、カテーテル・アプレーション、新しいペースメーカーの開発も進んでいます。背景となる心臓病のない不整脈でも、定期的な検診により予期せぬ変化に備えるべきでしょう。
九段クリニック院長 医学博士 阿部博幸





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