個人の健康管理と企業の健康管理

(一) 「まえがき」
 昨年末から毎月送って戴いている「健康管理」なる冊子を有難く楽しく拝見しています。100冊注文していますので親しい知人、友人達に進呈し、50~60冊を患者待合室に置かして戴き、皆様方に喜んでもらっています。毎月表紙に掲載されているキャッチフレーズ健康状態7つの条件に全く共鳴している所です。今の所私は全条件合格で、自分の健康を日夜心から感謝しております。今回健康に関する原稿募集に応じ、三部に亘り投稿し、第一部は「まえがき」として私の数ある既往歴を紹介し、第二部には「私個人の健康管理」を、第三部には産業医としての 「企業の健康管理」を披露し、諸賢の御批判を仰ぎたいと存じます。
 子供の頃、和歌山市の家の近くの小学校の校舎に「先ず健康」という標語の垂れ幕がさがっており、子供心に成程と感銘し、未だにその文字が脳裏に焼きついています。私は年令間もなく70才、いわゆる古稀を迎えんとしておりますが、生来頑健という訳でなく、数々の病気に罹患しております。二卵生双生児の一人として生まれましたが、10才の頃右鼠径ヘルニアの根治手術を受けました。思わぬ幸運と、努力から医師になれましたが、28才の頃、大学病院で研究中でしたが、若気の至り、酒の飲み過ぎから肝炎に罹患、黄疸が発現し、約1ケ月休養し、諸加療を受けました。
 昭和37年4月、弱冠34才で当地に有床診療所として有本外科医院を開設致しました。当初非常に多忙で、無理が重なり、高血圧と共に不整脈が現われ、現在無症状乍ら未だに不整脈が持続しております。昭和49年12月には大量喀血を経験しましたが、一日も休診することなく頑張りました。昭和19年頃、肋膜炎に罹患しており、胸部L線上でもかなりの硬化性病変が認められました。昭和60年、息子と次女の婿(二人共脳神経外科認定医)と三人で共同経営の形態で、医療法人 有本外科脳神経外科と組織変更致しました。手術、救急患者等は殆ど若いものに任せ、漸く多小の余暇も持てる様になり楽になりましたが、平成5年5月のある朝、突然右上肢運動麻痺と、構音障害が発現し、息子の往診を受け、軽い脳梗塞或は一過性脳虚血発作と診断されました。幸い一夜眠った翌朝には殆ど症状が消失しておりましたが、息子の奨めに依り精密検査を目的に、自分の病院に入院して諸検査と共に点滴注射等を受けました。三日間入院しただけで退院し、翌日より就業し、現在に至っております。従ってこの35年間にたったの3日間だけは休診したことになります。この様に私の一生も色々な病気との闘いでありましたが、全ての病気に負ける事なく、打ち勝った自信が持てました。古来”健全なる精神は健全なる身体に宿る“という格言がありますが、私はむしろ逆に”健全なる身体は健全なる精神から生れる“という実感を持っております。私は暑さ、寒さには比較的強い体質で、身体がだるいなど思った事は無く、身体中どこも痛くないというのが自慢です。頭痛、胃痛など未だに経験した事はなく、所謂四十腰、五十肩も知らず、脳梗塞罹患後は却って体調が好い様に思われます。
 三才半年上の妻は、最近物忘れが甚だしいのですが、身体は至って頑健、子供三人と孫四人も全て健康に恵まれ、病人は一人も居りません。
 次回は私個人の健康管理と云うか、私自身の健康法を御披露したいと思っております。
(二) 「私個人の健康管理」 (健康法)
 第二部には私の健康法というか、独特の 「ライフスタイル」をご披露させて戴きます。
「医者ともあろう者が」と笑われるかも知れませんが、先ず毎晩お酒を飲む習慣が最近10年以上も続いております。開業以来、一人で診療している間は、入院心患者もあり、度々急患に起こされるのでとてもお酒を飲む様な余裕は無かったのですが、息子達と一緒に仕事を始める様になってからは、楽な方に廻り、最近は一日として「アルコール」を抜いた日は有りません。”酒は百薬の長“と勝手なことを申しており、患者には休肝日が必要などと偉らそうな事を云っていますが、年に何度か、ビールだけというのが、私の休肝日です。然し、決して冷や酒は飲まず、年中ビール少々と日本酒を燗して、二合程をチビチビ飲む様にしております。毎晩楽しく妻と共にお酒をいただき、食事を美味しくよばれます。間食は殆ど摂らず、夜はご飯は食べません。朝はパン食で、米飯は一回病院の食堂で、給食をよばれるだけです。この様な食生活が良いのか、何を食べても美味しく、体重も今の所増えることなく比較的痩身です。お酒のせいか、物事を苦にしない性格からか、寝るのは早く、九時には床につき、ぐつすり眠ることが出来、朝は六時には起きています。食事はバランス良く、野菜も多く摂る様に努め、便通も殆ど毎朝快くあります。風邪も殆ど引くことも無く、体重は余り変りません。タバコは昭和54年頃からすっかり禁止しております。
 20才頃から吸い始め、当時の缶ピースを1日30本から40本も吸っていましたが、禁煙を決意してからは一服も吸っておりません。有害無益なタバコを、患者さんに止めさせる為には、自分が吸っていてはいけないと決心したからです。
 次は、毎朝の入浴です。夜は酒を飲みますので、夜入浴する事は無く、最近10年以上はずっと朝風呂を続けています。毎朝風呂につかり乍ら”朝風呂で 今日も元気だ 頑張ろう“と口ずさみ、自宅から病院まで毎朝、自転車で通勤しております。良い脚、腰の鍛練になると思っています。趣味として、書道、写真、切手収集、漢字学等をたしなみ、毎日を楽しく明るく、感謝の生活を送っております。″晩酌、早や寝、朝湯が大好きで、それで健康保った。モットモだ、モットモだという所です。
(三) 「企業の健康管理」
 私は日本医師会の認定産業医になっていますが、産業医として務めさせて貰っている 「不二製油(株)阪南工場」という企業の健康管理について報告させて戴きます。
 不二製油は泉佐野市の 「水産コンビナート」の一角にあり、従業員756名を有する中堅企業です。
事業内容として、製油関係、大豆蛋白製品の製造、研究「コレすっきり」 なる健康食品や「大豆のからあげ」、大豆胚芽茶とか 「大豆の滴」なる健康飲料の製造、低カロリーチョコレート製造部門等々、巾広く活躍しております。完全週休二日制で、土、日曜は毎週休業しております。私は産業医として月二回 (原則として第二、第四水曜) 午後二時から四時まで、会社の健康管理室なる診療室に出向き、専属ベテラン看護婦のN君と共に、従業員の健康診断、健康相談に従事しております。従業員は比較的若い人が多く、全く健康的に仕事に精出しており、明るい職場の雰囲気が感じられます。
 一方「相互会」という親睦会を結成し、趣味として仕事の合間に運動、文化を楽しんでおります。
 運動部には、野球、卓球、テニス、ソフトポール、バトミントン、バスケット、ラグビー、バレーポール、サッカー、ジョギング、サイクリング、ゴルフ、ツーリング等々のグループがあり、数々の戦績を残して活躍し、文化部としては囲碁、将棋、音楽、文芸(華道、茶道)、パソコン、書道、写真等々、度々多々の発表会など催し、健康で明るい職場であると感心しております。最近の目標として、従業員の休業総人数が、年間1,000名以下を目指して、工場長を筆頭に、全員緊張して健康管理にこれ努めております。私も産業医として時々安全衛生委員会に出席したり、職場のパトロール等を行ない、先日は新設された有機溶剤の環境測定施設である新溶剤実験室の視察を行いました。
 以上、私個人の健康管理と、企業の健康管理について詳述致しましたが、少しでも皆様方の御参考になる事があれば、幸いに存じます。
泉佐野市 有本外科脳神経外科 理事長 
不二製油株式会社阪南工場 産業医  医学博士 有本弘三





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