化学物質過敏症ってなに?

■極めて微量の化学物質で健康に障害

 最近、従来の中毒の概念からは考えられないほど微量の物質、特に人間が作り出した化学物質が人間の身体に悪影響を及ぼす可能性が分かってきました。環境ホルモンと呼ばれるような物質によって起こるといわれている症状や化学物質過敏症などがそれです。これらの症状を起こす原因物質の量は、中毒量の1000分の1から100万分の1という極めてわずかな量です。このような微量の原因物質はそれ自体が細胞に直接、障害を起こすというよりは、軽くスイッチを押すようにホルモンや酵素、神経系を介してからだの中の反応を引き起こしたり、促進したりすると考えられています。

■化学物質過敏症が疑われるのはどんなとき

化学物質過敏症 頑固な頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛、のどの痛み、下痢や便秘、冷や汗、動悸、皮膚のかぶれ、鼻炎、不眠やうつ状態などの精神症状、といったように、一つひとつの症状には特徴がありませんが、全身のあちらこちらに一つや二つの病気では説明できない、いくつもの症状が一緒に出てくるのが特徴といえます。
 更に化学物質過敏症には、症状出現に先んじて、最近、化学薬品を使用した、あるいは何か強い異臭・刺激臭を感じたなど何らかの化学物質に接触したというエピソードがあります。また、原因と思われる物質から遠ざかると症状が軽くなり、再び接触すると症状が悪化するというのも、特徴です。

■原因となる物質は

原因となる物質 どんな化学物質も原因となり得ますが、殺虫剤、除草剤、有機溶剤、ホルムアルデヒド、可塑剤、油脂類などが頻度的に高いようです。一般家庭では、新築や内装の模様替え、壁の塗り替え、床下の白アリ駆除などで接触する機会があります。しかし、直接引き金を引いた物質だけではなく、体内にたまっているそのほかの化学物質も病気の出現に大きく関係しますので、体内に取り込む化学物質の総量を考える必要があります。

■治療と予防

 これまでの病気は、原因は患者さんのからだの中にあり、患者さんは抗生物質を飲んだり、病巣を手術で切り取ったりして治療してきました。しかし、化学物質過敏症のような病気は、その原因のほとんどが患者さんのからだではなく、患者さんを取り巻く環境のほうにあります。ですから患者さんのからだをいくら触ってみても解決は難しく、自宅から住居のある町まで、患者さんを取り巻く環境を考えていかなければ治療に結び付きません。まず、日常生活のなかで身近な環境を整え、同時に適切な食事、十分な休息・睡眠をとり、適度な運動をし、精神的なストレスを避けて健康状態をベストに保つことが重要といえます。
上手なおつき合い

■化学物質と上手なおつき合い

 巷にあふれている化学物質は、どれも人間の文明生活を考えて作り出されたものばかりです。例えばからだに悪いとされる殺虫剤でさえも、食糧の増産、伝染病の撲滅に大変貢献してきました。ですから化学物質すべてを否定するものではありません。しかし、量が少なければ安全とか、害虫は死んでも人間には安全などという誤った考えを持たずに、化学物質は危険なものだという認識を持って必要最小限の使用にとどめるという態度が重要でしょう。




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