ビタミン剤とサプリメント

ビタミンとは?

ドリンク 食べ物の栄養素は、炭水化物、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンという五つの成分に分類されます。このうち、炭水化物中の糖質や脂質、タンパク質の一部はエネルギー源として用いられ、タンパク質とミネラルの一部は体の構成物質として活用されます。これに対して、ビタミンはそれぞれの栄養素の働きを補助するような役割をもっています。
錠剤 ビタミンにはいくつかの種類があり、それぞれに作用が異なります。名称のアルファベットや数字が飛び飛びとなっているのは、発見時にはビタミンとされたいくつかの物質が、以前発表されたものと同じ物質であることが判明したり、動物には必要であっても人間には必要ないことが判明したためです。

ビタミンの種類とその主な働き

(1)ビタミンA
暗所での視力を確保し、皮膚や粘膜を健やかにします。また、細菌への抵抗力を増進し、病気にかかりにくくします。
(2)ビタミンB群
①ビタミンB1
糖質がエネルギーに変換されるときに必要となるビタミンです。また、脳や手足の神経が正常に働くよう作用します。
②ビタミンB2
皮膚や口内の粘膜を保護し、発育を助けます。またタンパク質、脂質、糖質などすべての栄養素の代謝に関わりがあります。
③ビタミンB6
神経の興奮を抑制し、身体の発育を促進したり生殖機能を活性化する働きがあります。タンパク質の代謝に関わっています。
④ビタミンB12
ヘモグロビンの合成を助け、悪性の貧血を予防したり、脳の機能を正常に保ちます。タンパク質の代謝に関わっています。
⑤ナイアシン
ビタミンB2と同じく、皮膚や口内の粘膜を保護し、発育を助けます。脂質や糖質のほか、アルコールの代謝に関わっています。
⑥葉酸
細胞が分裂するときに必要で、不足すると造血機能が侵されて貧血になります。
⑦パントテン酸
各種ホルモンの合成に作用するビタミンです。糖質、脂質、タンパク質の代謝にかかわっています。
⑧ビオチン
糖質や脂質、タンパク質の代謝にかかわっています。
(3)ビタミンC
酸化をふせぐ作用があり、体内で過酸化脂質ができるのを抑えます。また、血管と細胞の間にあるコラーゲンが作られるときに必要となります。
(4) ビタミンD
カルシウムの吸収を助けます。また、骨の発育を正常にします。
(5)ビタミンE
細胞の酸化を防ぎ、過酸化脂質ができるのを防ぎます。また血管を拡げる作用があり、血液の循環を改善します。
(6) ビタミンK
血液を凝固させる働きを持っているほか、骨の形成も促します。
 ビタミンは、油脂に溶けるものと水に溶けるものの二種類に分類されます。油脂に溶けるビタミン (脂溶性ビタミン)はビタミンA・D・E・K、水に溶けるビタミン (水溶性ビタミン) はビタミンB群とビタミンCです。

ビタミンの過剰摂取

 ビタミンを過剰に摂取することによっておこる障害は、そのビタミンが脂溶性のものか水溶性のものかによって変わってきます。
 脂溶性のビタミンを過剰に摂取しますと、最初は 「摂取量が少ないとき」 や「急に体がこれらのビタミンを必要としたとき」 にそなえて肝臓など体の組織に蓄えられるのですが、常に過剰な状態が続くと、過剰症を起こして体に障害があらわれてきます。
 特に気をつけていただきたいのは脂溶性ビタミンのAとDです。ビタミンAの過剰は頭痛や吐き気を起こし、さらには腫瘍をつくつてしまうこともあります。ビタミンDの場合は、成人についてはあまり問題はありませんが、乳幼児については臓器にカルシウムが溜まりすぎる、といったことも起こり得ます。ただしこれらの障害は、ビタミン剤などから大量に摂取しっづけているときに起こるもので、食物から摂っている程度であれば問題はありません。
 一方、水溶性ビタミンは、過剰に摂取しても、体に蓄えられることなく尿に排泄されてしまいます。、よって、過剰な摂取による障害を心配する必要はありません。ただし、安全性が高いとされるビタミンCでも、過剰に拝取している状態を長く続けた後、急に摂取量を落としますと、たとえ「身体が本来必要とする量」を確保していたとしても、ビタミンC欠乏症に陥るケースもありますので注意が必要です。

ビタミン剤と保健機能食品・サプリメントの違いは

①ビタミン剤
 ビタミン剤には様々な種類がありますが、これらはみな「薬事法」に基づく厚生省の検査に合格したものばかりです。よって、ビタミン剤には必ず成分の含有量や一回の分量などが示されています。ビタミン剤については、食品とするよりは、薬として認識するのが妥当であるといえるでしょう。
②保健機能食品
食品マーク(a) 特定保健用食品
 特定保健用食品は実際に健康に関して効用がある成分を加工したもので、厚生省の審査を受け、健康への効用を示す表現を厚生労働大臣が許可した食品です。現在認定されているものは、「ミネラルの吸収を助ける」「食後の血清中性脂肪が上昇しにくい」など、効能によってだいたい十二種類に分類できます。
(b) 栄養機能食品
 通常の食生活を行うことが難しかったり、一日に必要とされる栄養成分を摂取できない場合に、その補給や補完のために利用する食品です。栄養成分の含有量などの基準をクリアしていれば、特定保健食品のように厚生労働省の許可を必要としません。ただし、利用者が紛らわしさを感じることがないよう、栄養機能に関する表示などについてはある程度の制限がかけられています。
③サブリメント (栄養補助食品・健康補助食品)
 食品から抽出した天然成分のものもあれば、化学的に合成されているものもあります。また含まれる栄養素の数によって「単一型」「複合型」「総合型」などと分類されます。業界団体(財団法人 日本健康・栄養食品協会) ではこれらのサプリメントに製品規格や表示広告基準など、いくつかの規格基準を設けており、この審査をクリアした製品に「JHFA」というマークを付けています。

ビタミンをどう摂るか

 食事のなかで一般の食品から摂るビタミンも、ビタミン剤などから摂取するビタミンもビタミンに違いはありません。効能や効果も同じです。一般の食品については、調理の仕方や食材の保存の仕方によっては、そのビタミンの何割かを失ってしまうというケースもよくあるので、実際ビのくらいのビタミンを摂取できたのか分からない、ということはあります。ただし、一般の食品からの摂取では、単一のビタミンだけを摂るケースは稀で、一度に複数のビタミンを摂ったりミネラルなどの栄養素もあわせて摂るケースがはとんどであるので、効率や効果の面では優れています。ビタミンには効果が相乗により強化されるものがあるからです。
 ビタミン剤などは、手軽に摂ることができる上、ビタミンの摂取量が分かるという利点がありますが、一般の食品からの摂取ではほとんど考えられない「摂りすぎのおそれ」に注意しなくてはなりません。
 以上のことから、ビタミンはあくまで一般の食品から摂ることを基本とし、それでも不足するときにビタミン剤などで補充するという形をとるのが無難であるといえます。

ドリンク剤と錠剤の違いは

 ビタミンを補給する場合、ドリンク剤と錠剤のどちらが良いか、という点についてですが、これについては一長一短があります。吸収の早さ、という点についてはドリンク剤の方がすぐれていますが、長期にわたって服用し続けるのであれば、錠剤の方が経済的です。栄養面ではほとんど差がありませんので、好みで選ぶと良いでしょう。
 一点注意しておきたいのは、ドリンク剤の飲みすぎです。ドリンク剤は成分をアルコールで抽出しているので、あまり飲み過ぎると、内蔵の負担となることも考えられます。

ビタミン剤をどう使うか

 ビタミン剤をどういうときに摂取すればいいか、ということについてですが、最も効果的なのは脚気・壊血病・夜盲症など、欠乏症からくる病気のときです。まず、欠乏症のときには薬としてビタミン剤が必要といえましょう。
 次に、欠乏症の予防としても効果があります。本来、バランスのとれた食生活をしていれば、ビタミンの欠乏は考えられず、ビタミン剤や保健機能食品での補給は必要ありません。しかし、インスタント食品を中心とするなど偏った食事をしている人や、好き嫌いの多い人には欠乏の可能性があるので、ビタミン剤などによる補給も悪いことではありません。また、妊娠・授乳期の人は、ビタミンが欠乏しがちになりますから、こちらもビタミン剤による補給を行っても良いでしょう。
 さらに、体の調子が悪いときにビタミン剤を使うのも理にかなった使い方といえますが、その状態ごとによって効き目のあるビタミンは変わってきますので、医師や薬剤師に相談し、自分の症状の改善に合ったビタミン剤を選んでもらうと良いでしょう。
 なお、ビタミン剤には化学的に合成されたものと食品から抽出された天然のものとがありますが、ビタミンEを除いては、効果に大きな違いはありません。ビタミンEだけは、天然のほうが効果があるといわれています。
 ビタミン剤を使用するにしても、栄養機能食品やサプリメントを使用するにしても、積り過ぎにだけは注意して、上手にビタミンを補給するようにしてください。



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