花粉症Q&A集

◆「花粉症に関する相談マニュアル(Q&A)等の提供について◆
事 務 連 絡   平成17年1月28日

社団法人日本薬剤師会 御中
厚生労働省健康局疾病対策課
 監修:日本医科大学耳鼻咽喉科 大久保 公裕
作成協力:国立病院機構相模原病院 秋山 一男
      千葉大学耳鼻咽喉科 岡本 美孝
花粉症Q&A集(平成17年花粉症緊急対策用)
地方自治体向け
【総論】
Ql.花粉症の正体つて一体なんですか。
 花粉症の正体は,花粉に対して人間の体が起こす異物反応です。体の免疫反応が、花粉に過剰に反応して花粉症の症状がでるのです。
Q2.花粉が鼻や目にはいると、とうして花粉症の症状がでるのですか。
 体が花粉を外に出そうとするために、「くしゃみ」で吹き飛ばしたり、「鼻水」「涙」で花粉を洗い流そうとしているのです。
Q3.どんな花粉がいつ飛んでいるのですか。
 2月から4月はスギ花粉、4月から5月はヒノキ花粉、6月から8月はイネ科花粉、8月から10月はブタクサ花粉が日本中のほとんどの場所で飛散しています。
Q4.スギ花粉症は日本にしかないのですか。
 スギは日本特有の木です。スギは中国の一部にも生えていますがその数は日本と比べると少なく、スギ花粉症が問題となっているのは、ほとんど日本だけだと考えてよいでしょう。
Q5.花粉飛散量は年々増えているのですか。
 スギ花粉の飛散量は年によって大きく変勤しますが、近年,戦後に植えられたスギの木が大きく成長し,潜在的な花粉生産能力が高い状態になっています。
 また、気象の温暖化の影響で花粉は多く産生きれるようになっているとも言われています。
 スギ花粉飛散を減少させる方策として、花粉の多い木の抜き伐りや花粉の少ないスギを増やす取り組みが行われています。
Q6.平成17年は花粉が増えるといわれているのはどうしてですか。
 気温が高い、雨が少ない夏の気候のもとでは、スギやヒノキの花粉の生産が多くなります。2004年の夏はこの条件が整っていたため、2005年の飛散するスギやヒノキの花粉は多いことが予想きれています。
Q7.花粉症の患者さんはまとのくらいいるのですか。
 いろいろな研究から、日本の花粉症の人は30-50歳代に多く、日本の人口の約16%(1998年の推計)だと考えられています。近年、花粉症の人は増加していると考えられますが、との程度増加しているのかは分っていません。また、増加している原因は、花粉飛散数が増加していることに加えて、いろいろな環境の変化の影響も考えられていますが、十分に確認はされていません。

【花粉症の予防】
Q8.花粉症になりやすい人はいるのですか。
 花粉症以外のアレルギー疾忠をもっている方や、家族の方が何らかのアレルギー疾患を持っている人は、それのない人に比べて、花粉症になりやすいと考えられています。
 また、いわゆる「かぜ」にかかると鼻等の粘膜が炎症等を起こし、花粉が取り込まれやすくなるため、花粉症になりやすくなる可能性があります。
Q9.今は花粉症ではないのですが、今後花粉症にならないためにどうすればよいのですか。
 大量の花粉に出会うと、体が花粉に対する抗体を産生する可能性が高くなります。スギに対する抗体をたくさん産生すると、何らかのきっかけでスギ花粉症を発症しやすくなります。また、これまで軽症で花粉症であることに気がつかなかった方も、花粉を鼻からたくさん吸い込んだり、目に入ったりすると、花粉症の症状が強くなります。
①マスクは効果がありますか。
 マスクは、花粉の飛散の多いときには吸い込む花粉をおよそ3分の1から6分の1に減らし、鼻の症状を軽くさせる効果があります。
   また、花粉症でない方も,花粉を吸い込む量を少なくすることで、新たに花粉症になる可能性を低くすることが期待きれます。
②うがいは効果がありますか、いつ行うのがいいですか。
 鼻の粘膜には線毛があり、粘膜の上の異物を輸送します。うがいは、のどに流れた花粉を除去するのに効果があります。
 外出から戻ってきたら、かぜの予防にもなりますので、うがいをしましょう。
③洗顔は効果がありますか。いつ行うのがいいですか。
 花粉が人間に付着しやすいのは表面に出ている頭と顔です。外出から戻ってきたら洗顔して花粉を落とすと良いでしょう。
④洋服の生地はどのようなものがいいのですか。
 洋服に花粉がついてしまうので、花粉飛散している時の外出時には花粉のつきやすい毛織物による上着やコートは避けたほうが良いでしょう。すべすべした表面の綿かポリエステルなどの化学繊維のものが花粉が付着しにくく、付着した花粉を吸い込む量を減らすことが期待されます。
⑤めがねは効果がありますか。
 メガネは花粉の飛散の多いときいは、目に入る花粉を2分の1から3分の1まで減らすことができるので、眼の症状を軽くさせる効果があります。
⑥その他予防方法を教えてください。
 花粉が人間に付着しやすいのは表面に出ている頭と顔です。頭の花粉は、帽子などで避けることが可能です。

【花粉症の症状がでたら】
Ql0.花粉症の診断はどうやってするのですか。
 花粉症の診断の多くは、花粉飛散シーズン中の症状の有無と血液中にある花粉に対する抗体の存在で診断されます。さらに、耳鼻咽喉科では鼻の粘膜を直接みて、アレルギーの反応を観察します。
Q11.早く治療すると、とのようなメリットがあるのですか。
 花粉症の症状が起こりはじめたごく初期では、鼻粘膜にまだ炎症が進んでおらず。この時期に治僚を開始すると粘膜の炎症の進行を止め、早く正常化きせることができるため、花粉症の重症化を防ぐことができます。
Q12.花粉症の症状がでたらどの病院に行けばいいですか。
 ひどい鼻の症状がある場合は耳鼻咽喉科,目の症状がひどい場合は眼科をおすすめします。内科、小児科アレルギー科などでも診療が受けられます。
Q13.花粉症がひどくならないためには、普段の生活の中で何に注意すればいいですか。
 一般的な注意事項として、睡眠を良くとること、よい生活習慣を保つことは、正常な免疫機能を保つために重要です。風邪をひかないこと、お酒の飲みすぎに気をつけること、タバコを控えることも鼻の粘膜を正常こ保つために重要です。
Q14.花粉症の人がかかりやすい病気はありますか。
 花粉症はアレルギーの病気なので、同じアレルギーである喘息や通年性のアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などになりやすいと考えられています。
Q15.花粉の季節でなくても花粉症の症状がでることがありますか。
 スギ・ヒノキ花粉症では2月から5月と10月から11月、イネ科の花粉症は6月から8月、ブタクサの花粉症では8月から10月に症状が出ますが、そのほかの季節で鼻の症状が出るときには花粉症以外の鼻炎が考えられます。
Q16.花粉症に効くといれれているものの効果を教えてください。
 花粉症関連グッズはマスク、メガネのほか様々なものが出されていますが、実際に花粉症の症状を良くするというデータは、充分にないのが現状です。
①お茶は効果がありますか。
 甜茶ポリフェノールはアレルギーで生じるヒスタミンの作用を和らげる効果があると言われていますが、実際の患者さんの効果は不明です。
②ヨーグルトは効果がありますか。
 腸内細菌を変化きせると体内の環境がアレルギーを抑えるようになると考えられています。しかし、ヨーグルトを毎日食べるブルガリアの人でもアレルギーの病気はありますので、花粉症を完全に治すことは難しいかもしれません。
③鼻の穴に塗るクリームは効果がありますか。
 鼻の穴に塗るクリームには薬効成分は入っていませんので、花粉症自体を治す効果はありません。しかし、花粉が粘膜にくっつく前に、クリームがブロックする効果はあると考えられます。
④衣類の静電気防止スプレーは効果がありますか。
 毛織物以外の衣類にはほとんど花粉がつきませんが、例えは毛皮のコートなどにスプレーをすることは効果が期待されます。

【花粉症の治療について】
Q17.花粉症にはどんな治療法がありますか。
  花粉症の治療には、医療機関で行う薬物療法、手術治療、減感作療法があります。しかし、治療を行うことと平行して、自らが花粉の暴露から身を守ることが前提となることはいうまでもありません。
Q18,花粉症の治療にはどのくらいお金がかかりますか。
 3割負担の方の場合は、初診で検査を行うには6000円がかかります(ただし特定機能病院の場合は、さらに加算があります)。さらに次の診療からは、毎回再診料などがあり、薬剤(経口薬、点鼻薬、点眼薬など)を2ヶ月使用し、それでワンシーズン6000円程度になります。つまり、その方の重症度により異なりますが、初めての年ではトータルで12000円から17000円程度、次の年がらは(再診扱いで追加検査を行わない場合)7000円から12000円程度の負担になります。
Q19.花粉症の薬の副作用を防ぐにはどうすればいいですか。
 自分がどのような薬剤でどのような副作用を生じるのかを前もって分ることは難しいと考えますが、ご自身の症状、生活様式、職業なども医師にお話しし、なるべく副作用のない薬剤を選択してもらうようにしましょう。
Q20.花粉症は完治できるのですか。
 現在、完治の可能な治療法は減感作療法だけです。しかし、現在の治療法では、完治する率は決して高くありませんし、また副作用の問題や治療に長い期間がかかるため、現在も新しい減感作療法の研究が進められています。
Q21.新しい花粉症の薬は研究されていますか。
 細胞の中の情報伝達などをコントロールする薬剤などの研究や、アレルギーの原因となる蛋白に対する抗体等が花粉症治療に応用できるか、といった新しい治療法の研究が進められています。
日本薬剤師会雑誌 第57巻 第3号 平成17年3月1日





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