2 妊婦・授乳期に於ける、薬品服用の注意

妊娠と薬

 一般的に妊娠中に薬物を使用すると、効果も副作用も増強される傾向にあります。
これは、妊娠中は諸種ホルモンが多量に分泌され、代謝や全身の血液循環などが昂進するためと考えられます。従って、妊娠中に非妊時と同じ量を使用すると効果が強すぎたり、副作用がでやすくなるので、充分注意しなければなりません。
 特に、妊娠中の薬の副作用の中で最も恐れられるのは、妊娠初期に使用した場合の胎児の奇形発生の間題であります。薬が胎児の奇形を起こすことはサリドマイド事件がきっかけとなって判明し、医薬業界はもちろん、一般の人々にも大きな衝撃を与えたことは、まだ記憶に新しいと思います。
 この事件を契機として、薬物や化学物質の催奇形性の問題が注目され、検索と知見の集積が飛躍的に増加して、その結果判明したことは、
 1.動物実験では極端に大量を用いると、多くの化学物質で催奇形作用が認められる。
 2.これまでに調べられた中で最も催奇形作用が強く、しかも特異性が高いのはサリドマイドである。
 3.抗癌剤や抗てんかん薬などの特殊なものを除けば、臨床的に常用される薬の多くは、妊娠初期に大量を長期間連用することがない限り奇形発生の危険は少ない。
  ただし、どんな場合でも「絶対に大丈夫」という保証はできないし、してはならない。  先天異常の発生と妊娠中の薬物使用がまったく偶然に併発する可能性は、決して少なくないからである。こういう事態も考慮すると、妊娠中の薬物使用は原則的には避け、必要度が高い場合にのみ、できるだけ少量、短期間の使用にとどめるべきである。

1 妊娠中だが、風邪薬、頭痛薬を飲んでもよいか?(25才 女性)

答え 現在市販されている一般用あるいは配置用風邪薬の使用はまず心配ないといって良いでしょう。 もちろん、必要最小限にとどめるべきであることはいうまでもありません。

2 妊娠しているが、総合ビタミン剤やドリンク剤を服用している.大丈夫か?又、Ca剤は副作用はあるか?(25才 女性)

答え  栄養剤の使用は、その必要があるならば使用しても良いし、市販の普通の栄養剤なら問題ないと思われます。又、Caは胎児の骨格その他に必要で、出産で母親の歯が、がたがたになってしまうことで、よく判ります。Ca吸収率の良い牛乳等乳製品を多く取るようにして下さい。
 妊娠中のCa摂取は1.2g必要といわれ、現在の食生活では500mgで700mg不足しています。
 Ca剤で補うのも良いでしょうし、副作用の心配はいりません。

3 妊娠の後期だが便秘で困っている.妊娠中でも使える便秘治療剤はないか.浣腸はどうか。早産の心配はないか?(23才 女性)

答え  確かに妊娠中はふだん便秘のない人でも便秘がちになるし、常習の便秘は妊娠時には増悪することが多い。強い下剤は骨盤内の充血を来たし、薬によっては子宮筋の収縮も起こして、早産を招来する危険があります。
 従って、妊娠中の便秘には繊維分の多い食物や冷たい牛乳を多く摂るなど、食事療法を主体とし、薬物の使用はできるだけ避けるべきです。どうしても用いなければならない場合は、生薬や漢方製剤等のうち作用の緩和なものを少量服用して下さい。
 又、浣腸は強い陣痛催起作用を持っています。従って、妊娠後期の浣腸はやむを得ない場合以外は禁忌です。

4 つわりで気分が悪い.なにか良い薬はないか。(27才 女性)

答え  答えは「無い」です。以前はいろいろな薬が使われたが、この時期が催奇形性に危険の最も高い時期に当たることと、確実に効く安全な薬が無いことの両方の理由で、現在はほとんど使われていません。



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