家族間に多発する突然死

 突然死に関する要因には、患者さん側の因子と環境因子があります。患者さん側の因子としては、人種や民族、遺伝、年齢、性、血流、ホルモン系などがあり、環境因子には、食物、薬品、運動、職業、文化などがあり多彩です。
 このうち、患者さん側の因子は大変複雑で、ときに環境因子から区別することが困難なものもあります。表面に現れる結果が、単一の遺伝子の働きによる場合と、多数の遺伝子の組み合わせによって起こる場合とがあるからです。
 最近解明された典型的な遺伝子病が「家族性高コレステロール血症」で、若年にして冠状動脈硬化を発症し、心筋梗塞によって次々と突然死する家系といわれています。一家族に心筋梗塞が発生するとき、両親が心筋梗塞または冠状動脈硬化を持っていたとすれば、その子供に心筋梗塞が発生する可能性が非常に高くなります。
 家族性高コレステロール血症の原因は、肝臓の細胞にLDLコレステロールを取り込む窓口であるLDLレセプター(受容体)の欠損や減少により、悪玉コレステロールであるLDLの代謝ができず、血中のLDLが増加するために起こります。遺伝形式は、常染色体優性遺伝です。両親から遺伝子を受けついだホモ型と片親から受けついだヘテロ型とがあり、ホモ型では100万人に一人、ヘテロ型では500人に一人の頻度で発見されています。 

家族性複合型高脂血症

 遺伝子が関与しているもう一つの病気が「家族性複合型高脂血症」で、多遺伝子によるものですが、その遺伝形式はまだ明らかではありません。この疾患では、家族内にさまざまな型の高脂血症がみられ、動脈硬化の合併する割合は、家族性高コレステロール血症と同様に高いことが知られています。心筋梗塞全体の約30%は、この家族性高脂血症によるもので、単なる高コレステロール血症を示すものは10%程度と考えられています。
 その他にも、動脈硬化を発症する遺伝子病として、「家族性Ⅲ型高脂血症」が知られています。この場合には、総コレステロールと中性脂肪がともに上昇しています。
 米国カリフォルニア州の西部多施設共同研究をご紹介しましょう。この研究は、カリフォルニア州の10企業に従事している危険因子を持つ健康的な39歳から59歳までの3,182人の男性を対象にしています。6年半にわたる
追跡調査です。全体では、年間1,000人に対して、冠状動脈疾患が9.4人発症しています。これを家族について分析してみると、親が冠状動脈硬化をもっている場合は、13.1人となり、もっていない場合の8.6人に対して1.5倍も多くなっています。
 もしも、家族内に心筋梗塞の人がいる場合には、積極的に動脈硬化兆候を見出して、早くから予防に心がけるのが賢明です。



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