過労死のトップは心不全

 働き過ぎの国ニッポンの象徴として「過労死」が、そのまま「カロウシ」として世界中に広がっています。『広辞苑』 (岩波書店)第四版にも、「仕事のしすぎによる勤労者の急死。1980年代後半から一般化した語」として収録されました。
 すでに社会問題となっている過労死について、厚生省による平成元年度人口動態社会経済面調査は次のように結んでいます。「過労死の原因は、脳血管疾患が34.6%、心不全が31.5%、虚血性心疾患が19.8%と、心疾患関係がその半数を占めている」と。
 この調査の村象となったのは、30歳以上、65歳末満の壮年死亡者797人です。 このうち、男性は589人で女性の208人に比べ、女性より2.8倍も多いことがわかります。
 男性の場合を年齢別にみると、30歳代では、心不全が51.5%と最も多く、この年代の過労死の主因であることがわかります。
同じように、40歳代でも心不全がトップで、37.5%を占め、50歳代になると脳血管疾患が35.6%と最上位となります。60歳代となると心不全が30.4%、虚血性心疾患が27.5%、脳血管疾患が29.7%とほぼ同数となります。
 女性の場合には、30歳代から50歳代まで、過労死の死因のトップは脳血管疾患(それぞれ40.4%、53.8%、48.8%) で占められていますが、60歳代になると、脳血管疾患と心不全が同数の32.4%で、虚血性心疾患がこれに次ぎ24.3%となります。
 これをわかりやすくいいかえると、男性の場合には心疾患で、女性の場合には脳血管疾患で、過労死する頻度が高いということになります。
 この過労死の主要死因である脳血管疾患、虚血性心疾患、心不全で死亡した者のうち、高血圧の既往を有するものは、それぞれ43.1%、40.5%、25.1%となつており、過労死の背景に高血圧が関与していることがわかります。また、虚血性心疾患で死亡したもののうち、31.0%に心疾患の既往があることは、注目に値する事実です。
 労働省はこの過労死を重くみて、平成7年3月から、過労死に「不整脈による突然死」も加えることに決定しました。突然死とは、すでに説明しましたように、「予期せぬ内因性疾患による24時間以内の死亡」 のことです。この死囚として、最も多いのが急性心筋梗塞や急性心不全、重篤な不整脈などの心疾患で、次に多いのが、脳出血やくも膜下出血などの脳血管疾患です。労働省が「不整脈による突然死」を加えたのは、不整脈が引き金となり、一瞬のうちに心停止となってしまう急死を予防可能なものとして位置づけ、その対策に力を注ぐことを意味しています。
 心臓ドックは、まさしく過労死や突然死を未然に予防するための心臓チェックシステムです。隠れている虚血性心疾患や重い不整脈を発見することが可能ならば、危険を未然に防ぐことが出来るのです。



inserted by FC2 system