男性はハートを狙われている

 虚血性心疾患は、女性より男性に多いことをご存じですか。働き盛りのご主人が、心筋梗塞で突然死した例をよく聞きます。女性は閉経(へいけい)後に、はじめて狭心症が発症しやすくなる事実があります。

男性の二人に一人が死亡している

 これらのことは、厚生省が毎年発行している『国民衛生の動向』によって確かめることができます。1990年版によって、虚血性心疾患の人口10万人に対する死亡率をみますと、男性では44.9人、女性では38.2人とあり、やはり、男性が多くなっています。
 これを年齢別にして比べてみますと、50~54歳では、男性26.8人、女性6.9人、55~59歳では、男性49.7人、女性11.8人となります。年齢が上がり、60~64歳では、男性80.6人、女性28.9人とその差が歴然としています。
 さらに65歳を超えますと、男性371人、女性は263.6人で、いずれの年代でも男性の方が女性よりも虚血性心疾患でより多く死亡しているのです。しかし、女性では、更年期を迎えるころから、急に死亡率が増加してくるのがわかります。45~49歳では、3.1人であったのが50~54歳で6.9人と二倍以上にはね上がっています。
 次に、医療施設(病院・診療所等) で治療を受けている患者数と、受療率がどのくらいかみてみましょう。
 人口10万人に対して、男性は90人、女性は113人の割合で虚血性心疾患の治療を受けています。実際に、治療に専念しているのは女性の方が多いということです。
 患者数と死亡数を比べてみると、受療者のうち、男性では50%、女性では33.8%の人が虚血性心疾患で死亡しているのです。わかりやすくいえば、虚血性心臓病で治療している男性は二人に一人、女性の場合は三人に一人が心筋梗塞で死亡するということです。男性は心臓病で命を落とすといわれるゆえんです。

三大リスクファクターとは?

 有名なアメリカのフラミンガム・スタディにおいても、「男性」「高年齢」は虚血性心疾患のリスクファクター(危険因子)としてあげています。日本では、これらのことは「背景因子」と呼び、治療の可能な高血庄、高脂血症、糖尿病、肥満などをリスクファクターと呼んでいます。男性のほうが女性より虚血性心疾患にかかる頻度が高いことは、日本でも欧米でも同じといえるでしょう。
 虚血性心疾患が女性に少ない理由としては、女性ホルモンであるエストロゲンの血管保護効果、血中脂質やヘマトクリット(赤血球の容積)の相違、タバコ喫煙量の差などがあげられています。しかし、エストロゲンがリポ蛋白代謝に適度な効果をもたらしていることを除いては、証明されたものはないようです。男性は、少なくとも「男性」というリスクファクターを除いた他のリスクファクターの除去をおろそかにすれば、生命は危ないということです。




inserted by FC2 system