たかが高血圧されど高血圧

治療もせず放置していると・・・

 高血圧症は、日常よく見られる病気で、わが国における有病率の第一位の座を占めています。一般的には症状のないことが多く、高血圧症を指摘されても治療もせずに放置している患者さんが意外にも多いのです。
 私事ではなはだ恐縮ですが、高血圧の怖さを示す出来事を最近経験したので、紹介しましょう。
 浜松に住んでいる51歳の叔父のH氏海外駐在も長く某社の渉外部長をしています。ある朝、出社しようと自宅の前に駐車してある自家用車のエンジンをかけたちょうどそのとき、頭をハンマーで殴られたような強烈な頭痛におそわれ、その場に倒れてしまったのです。これを見ていた家人がすぐに救急車を呼び、ある病院へ緊急入院させたのです。
 その日の昼近くに、脳神経外科の担当医から報告があり、「くも膜下出血ですが、残念ながら手術はできません。保存的な治療で経過をみたいと思いますが、よろしいでしょうか?」というものでした。
 担当医の話では、脳低動脈がらせん状に裂ける、非常にまれな脳動脈瘤であるらしいのです。
 発病の経緯を聞いてみると、3ケ月前までは高血圧症の診断で降圧剤を服用していたが、血圧が安定しているので医師の指示により中止していたとのこと。しかし、その後は医師診察を受けていなかったのです。
 高血圧症それ自体は、自覚症状が乏しいことが多いのですが、心筋梗塞や脳出血、大動脈瘤の破裂の引き金となり、突然死の遠因ともいえる大変重大な病気なのです。高血圧はまた不整脈や賢臓の障害を悪化させ、動脈硬化も進展させます。
 現在、高血圧症の治療薬は大別して五つに分類されいてます。降圧利尿薬、血管拡張薬、交感神経抑制薬、カルシウム桔抗薬、ACE阻害薬です。
 医師は、この中から患者の症状や病状にあった薬剤を処方します。血圧が安定すれば、服薬の中止も可能ですが、H氏の轍を踏まぬためにも、継続して血圧をチェックすることは必須と思えます。

「遺伝だから」とあきらめない・・・

 高血圧症の病因には、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡んでいます。したがって両親が高血圧であったので、と放置するわけにはいきません。
 最近では、分子生物学的手法により高血圧症の成因遺伝子の解明が進められています。これは将来の遺伝子治療のみならず、当面の高血圧症の治療と予防の観点からも重要です。人の高血圧症では、グルココルチコイド反応性アルドステロン症やリドル症候群、17αヒドロキシラーゼ欠損症の遺伝子が解明され、本能性高血圧症の原因遺伝子としてアンジオテンシノーゲン遺伝子など、いくつかが明かとなっています。





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