「生涯元気」な息子を維持するには!

投薬治療の副作用

 47歳のK氏は、相談したいことがあると言って診療終了間際に駆け込んできました。何やら深刻な面持ちで 「最近、息子の元気がないが、何か良いビタミン剤などはないでしょうか」とのこと。
 K氏の年齢であれば、そろそろ男性更年期が始まっても不思議はない。仕事上のストレスや睡眠不足などもインポテンツを助長する原因なので、日々の生活パターンの変化やストレスについて伺ってみたが、まったく思い当たることがないのである。
 ただ一つ気になったことは、40歳代に入ってから高血圧となり、以来ずっと投薬治療を受けていることです。早速、飲んでいる薬を見せていただいたところ、ベーター遮断薬と判明しました。実はこの薬剤が曲者だつたのです。
 今日では、ベーター遮断薬(ベーター・プロッカー)は、降圧薬、狭心症予防薬、不整脈治療薬として広く使用されています。その副作用の一つに性機能低下を挙げることができ、報告によるとベーター遮断薬を服用した症例の5~10%にインポテンツが見られます。それは、ベーター遮断薬の中枢性交感神経作動の低下作用、生殖器系血流減少作用によるとされています。
 ベーター遮断薬による性機能低下は、一時的なもので、薬物の服用を中止するだけで、性機能障害は回復します。K氏の場合も、他の降圧剤に変更したところ、翌週には回復したと電話での報告でした。

身近にある必須栄養素

 ここで注意を喚起したいのは、似た作用を有する薬物がほかにもあることです。まず、中枢神経用薬としては、催眠鎮静薬、抗てんかん薬、精神神経用薬などがその代表的なものと言えます。末梢神経用薬としては、自律神経薬、鎮痙薬があります。アレルギー用薬の抗ヒスタミン薬も性機能低下をもたらします。そのほか胃潰瘍の薬として使用されているシメチジン(H2-ブロッカー)もその頻度が高い薬剤です。さらには、前立腺治療薬の酢酸クロルマジノンは、薬物の性質上、高頻度に性機能障害を発生します。
 K氏の質問ですが、性機能と関係する必須栄養素は身近にあります。それは最近不足がちな「性力のミネラル」と呼ばれている亜鉛です。男性の亜鉛の必要量は1日に15ミリグラムですが、1日に1ミリグラムの微量の不足は、テストステロン(男性ホルモン)の低下、精子数の減少、インポテンツを招来します。
 ここで、亜鉛源となる食品をいくつか挙げておきましょう。かき、にしん、いわし、はまぐり、無精製の穀類、小麦胚芽、ひまわりの種などです。
 では、皆様の「生涯元気」を祈っています。





inserted by FC2 system