心臓ドックのすすめ

一般検診では真の状態は分からない

 経団連副会長で東芝相談役だつた青井舒一氏がゴルフのプレー中に心筋梗塞で急死したことは、まだ記憶に新しいことです。同氏は、日頃から健康に気づかい健康診断も頻繁に受け、心電図などは太鼓判を押されていたということです。
 これは、現在一般に行われている健康診断や人間ドックが、心臓病をチェックする上でいかに無力であるかを示す一例です。人間ドックで得られる心臓の情報は、胸部Ⅹ線写真で計測する心臓の大きさと、安静時または軽度の運動負荷による心電図変化の有無といったものです。これだけでは、真の心臓病の状況を知ることができないだけでなく、心臓病の予知は全くできないのです。
 心臓ドックは、冒頭のような不慮の心臓死を防ぐための有効な方策です。すなわち、危険な心臓病の予知、予防の立場に立った系統的な心臓のチェックシステムなのです。心臓は、心筋、弁膜、冠動脈、刺激伝導系、心膜の5つの要素から成り立っています。これらをすべて点検して初めて心臓の欠陥部分が分かります。そこでこのうち、どれが致命的なのかを探り出すのです。
 九段クリニックで実施している心臓ドックは、問診から始まる15項目の詳細な検査内容が盛り込まれています。中でも重要なのは、診察所見、気づかない狭心症を発見する運動負荷心電図(トレドミル)、心臓の内部構造を探る心臓超音波カラードプラー検査、致命的な不整脈を予知する心室遅延電位、24時間の不整脈や心臓酸欠状態を調べるホルター心電図などです。

年に一度はオーバーホールを

 では、どんな人が心臓ドックを受けるべきなのでしょうか。基本的には、人間ドックの対象となっているすべての人々です。特に高血圧症、高脂血症、肥満、糖尿病、喫煙、ストレス、タイブA型性格の人はぜひ受けるべきです。また、運動時の胸部不快感、夜間の胸内苦悶、脈の乱れ、動悸、めまい、失神、息切れ、むくみなどの症状を有する人は適応です。これらは、心臓が発する危険信号だからです。
 一方、健康診断で心雑音、心肥大、不整脈などを指摘された場合も、精査目的で心臓ドックを受けるのがよいでしょう。
 ここで強調しておきたいことは、「無症候性心筋虚血」といって、心臓を栄養する冠動脈が塞がりかけているのに全く自覚症状のない病気があり、これが心筋梗塞や突然死の予備群となっていることです。心臓ドックでは、この病態を発見できるのです。致命的な不整脈についても同様に予知可能となっています。
 心臓はたった一つしかない人間の大切なエンジンです。年に一度のオーバーホールは、人間ドックの盲点をカバーする意味からも必要です。





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