ストレスによるめまい

几帳面な人は要注意

 糖尿病で治療中である39歳のS氏は、昨夜突然激しい回転性の目まいに襲われたと言って、早朝に受診してきました。回転性の目まいとは、壁や天井がぐるぐる回り、立っているのが困難な状態を指しています。よく話を聞いてみると、軽い耳なりを伴っており、目まいの発作の時には吐き気もあったとのことです。
 早速、平衡機能検査、聴力検査、めまいの検査、脳神経系のチェックを行ったところ、眼振という黒目が左右に規則正しく動く現象が著名に認められました。メニエール病です。
 メニエール病とは、二定量に保たれている内耳のリンパ液が何らかの原因で異常に増加し、内耳の水圧が上がると内耳が異常に刺激される結果となり、めまい、はき気、耳鳴りや難聴が起こります。めまいは、数分と短いものから、数時間続きますが、長くても1日で自然に消失します。難聴や耳鳴りも同様です。しかし、何週間かあとに繰り返し起こるようになり、発作を繰り返すたびにめまいに馴れることもあり症状は軽くなります。
 メニエール病の原因は、まだ解明されていませんが、ストレスと深い関係にあることが分かっています。ストレスが自律神経を刺激して内耳の血管の透過性を増加させる結果リンパ液が増え、その量の調節がうまく行かないために起こると説明されています。ストレスをためやすい几帳面なまじめ人間は要注意です。
 メニエール病の治療は、めまい発作をおさえるための安定剤、内耳リンパ液を調節するための利尿剤、血液循環をよくして内耳リンパ液の吸収を図る循環改善剤などの薬物治療が中心となります。

聴力が回復するのは3人に1人

 末梢性めまいにはメニエール病の他、突発性難聴があります。特に原因がないのに片方の耳が急に聞こえが悪くなり、キーンという高音の耳鳴りとともに発病します。めまいはないこともありますが、重症例では回転性のめまいが起き、はき気を催します。ただし、このめまいは発病時の1回きりで、数時間から数日程度で納まります。原因は、内耳のウイルス感染や血液循環障害ではないかと考えられています。治療によって聴力が回復するのは3人に1人です。
 末梢性に対し、中枢性めまいは、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病などの持病のある人に起こります。椎骨脳底動脈循環不全症や一過性脳虚血発作によるめまいで、小脳や脳幹部を灌流している血流がとだえると起こります。回転性のこともフワフワと流動性のこともあり、通常難聴、耳鳴りは伴いません。時に、手足の麻痺や舌のもつれを伴う脳梗塞の所見を呈することがあり、その重要性を認識すべきです。
九段クリニック院長 医学博士 阿部博幸





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