季節病にご用心

3点に分類できる発生の原因

 「有名人は冬死ぬ」とは、季節病カレンダーを作成した気象庁気象研究所の籾山政子女子の言葉です。確かに、冬になると各新聞の物故欄に有名人の記事がにぎやかになってきます。
 人間は環境を離れて生存できません。環境は、大きく内環境と外環境に分けられます。人間の体は内部環境の恒常性を保ち、外部環境の変化に対して適応しているのです。
 外部環境というのは、今回のテーマである気象、それに環境汚染物質、微生物・花粉などの生活環境、それに社会的関係が挙げられます。
 季節病とは、季節の変化に対応しきれなくなった身体に特定の症状が現れますが、その発生や死亡に季節的な変化がある病気と言ってよいでしょう。
 それでは、なぜ季節が変わると特定の病気が発生しやすくなるのでしょうか。その発生の仕方は3点に分類できます。
、季節的に変化する気象現象が発病や病状悪化の直接の原因となるもの。このテゴリーの病気には心臓疾患、脳出血、脳梗塞が入ります。
、季節的変化にさらされた身体が変調をきたし、発病や病状悪化の素地となるも の。喘息、インフルエンザなどの各種感染症が含まれます。
③、病気の原因となる物質や病原体、媒介する昆虫などが季節的変化の影響を受 けるもの。花粉症やマラリヤ、日本脳炎などが代表的なものです。

冬は体を鍛えよう

 季節病カレンダーからも読み取れるように、冬(12月から3月)に多発する三大病は心臓病、脳卒中と、肺炎、気管支炎、インフルエンザなどの呼吸器感染症です。老衰もこの時期に集中しています。
 寒冷により血圧は上昇し、心筋酸素消費量が増し、心臓の負担が増加します。また、寒冷ストレスは血圧上昇とともに血小板数を増加させ、血液の粘性を高めるという報告もあります。そこに冠動脈のスパスムが誘発されると心筋梗塞が発症し、突然死も起こります。心臓死を季節で見ると、3~5月が13・0%、6~8月が26・0%、9~11月が8・8%、12~2月が52・2%で冬の季節に全体の5割以上を占めています。脳卒中についても同様な傾向があります。
 一方、寒い季節には、気道の繊毛運動の低下、インターフェロンの低下、免疫機能の低下があり、この時期に増殖力、伝播力が強まっているウイルスの感染を受けやすいのです。
 寒冷期の対策として、十分な睡眠をとる、急激な寒暖の差を避ける、血圧の上昇する動作や嗜好品を避ける、水分不足にならぬよう心掛ける、十分なビタミンを摂る、そして失われた適応力をとりもどすべく身体を鍛えることでしょう。
九段クリニック院長 医学博士 阿部博幸





inserted by FC2 system