飲酒とC型肝炎

150万~200万人の感染者

 年末、年始になるとアルコールを飲む機会も多く、普段は元気なビジネスマンでも過労気味な日々が続きます。
 40歳のN氏は、体のだるさを訴えて診察室を訪れました。このところ宴会の連続で肝臓が心配であるとのことでした。N氏は、アルコールには強い方で、ビール3本に酒2本程度なら翌日の仕事に支障をきたすようなことは一度もなかったので、急に不安になったのでしょう。
 身体的所見で、黄胆や肝臓の腫大はなく血液検査の結果を待って病状を判定することになったのです。その結果は、GPT(ALT)が高く、C型肝炎ウイルスが検出されたのです。診断はC型肝炎でした。
 ウイルス性肝炎には、A型、B型、C型、D型、E型が知られています。A型とE型は経口感染し、B型、C型、D型は血液により感染します。D型はイタリアやインド、パキスタンなどで発生していますが、日本ではほとんど見られません。
 現在、問題となっているのがB型とC型肝炎です。C型肝炎ウイルスは、10年前の1989年に発見されたのですが、日本における急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝癌の半数以上がC型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされています。およそ150万~200万人の感染者がいると推定されています。

症状は軽く慢性化する

 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染するため、輸血が主な感染原因でしたが、高感度なC型肝炎ウイルス抗体検出法が開発され、事前に感染を防ぐことができるようになりました。一方、覚醒剤常習者、刺青をしている人に感染者が多いことが知られています。
 C型肝炎ウイルスの感染力は非常に弱く、日常生活の中で感染者から他人に移る危険性はほとんどありません。性行為や母子感染もほとんど心配ありません。しかし、歯ブラシやひげそり用のかみそりは、共用しないなどの注意が必要です。
 C型肝炎の症状は、食欲不振、発熱、またN氏のように体のだるさ、黄胆などですが、一般にこれらの症状は軽く、慢性化することが多いのです。
 病状の進行はゆっくりで、感染から10年で慢性肝炎に、さらに15年で肝硬変になります。その後、およそ10年の経過で肝癌が発症します。
 このC型肝炎の治療は、安静、高蛋白食、禁酒です。一方、ウイルスの増殖抑制物質であるインターフェロンが有効であり、投与方法により20~40%の患者さんに効果が認められ、肝硬変や肝癌の発症予防も期待されています。
 C型肝炎ウイルスのキャリアや、N氏のようなC型肝炎発症者は、当然のことながら禁酒をしなければなりません。





inserted by FC2 system