肺癌とヘリカルCT

小さな癌細胞も容易に発見

 最近、ヘリカルCTという言葉をよく聞くがどんな機械ですか、と尋ねられることが多くなつています。
 ヘリカルとは、ヘリックスすなわち、らせんからきている言葉で、らせん状の、という意味です。CTは、コンビユーテド・トモグラフィの略でコンピュータを使った断層写真。Ⅹ線を用いて、人体を巻貝の殻のようにぐるぐる回って撮影し、コンピュータを使ってデジタル画像を断層写真として表示する、これがヘリカルCTです。
 ヘリカルCTを使うと、隙間を残さずに連続的に撮影(スキャン)できる上に、高速撮影なので一回の息止めで肺全体をスキャンすることができるのです。肺癌などの検診に最も優れた装置と言えます。
 肺癌のチェックでは、時間も5分ぐらいでワイシャツを脱ぐ必要もありません。放射線の線量も胃の検査と同等で、検診を目的として使用する場合でも許容範囲と言えます。
 高速ヘリカルCTは、直径6ミリの癌も発見できる程、高分解能力があり、心臓や横隔膜に隠れた癌も容易に発見できます。

早期癌なら切らずに治せる

 ヘビースモーカーで、営業担当のM氏(60歳)は、日頃から肺癌を気にし、会社の検診の際、胸部Ⅹ線撮影は必ず受けるようにしていました。M氏が気にしているのは最近痰が多くなってきたことです。
 当クリニックにヘリカルCT装置があることを知ったM氏は、肺癌検診を受けたいと申し出てきました。その結果、右上葉に1センチに満たない円形の腫瘍を発見。国立ガンセンターに入院していただいたところ、手術後2週間で退院、3週間後にはもう出勤していますと元気な笑い顔を見せてくれました。幸い癌の転移は全くなかったのです。
 肺癌は、その発生部位により中心型と抹消型の二つに分けられます。中心型は肺の入り口に近い太い気管支にでき、抹消型は肺の奥の深い細い部分に発生します。これを細胞のタイプで分類すると、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌の4種類です。このうち、腺癌と扁平上皮癌が8割を占めています。
 中心型には扁平上皮癌が多く、悪性度は比較的低いほうです。これに対し、抹消型では腺癌が多く悪性度も高いと言えます。
 四つのタイブのうちでは、小細胞癌が増殖速度が早く、非常に悪性度が高いのです。喀痰検査で発見されるのは、たばこを吸う人に多い扁平上皮癌です。
 治療の面でも、最近の進歩は目覚ましいものがあり、早期癌なら切らずに治せます。ヘマトポルフィリンを注射し、癌に集まったところをレーザーで灼く光線力学的治療や、内視鏡の一種である胸腔鏡手術も可能になっています。
九段クリニック院長 医学博士 阿部博幸





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