有機農産物表示制度はどう変わった2

 有機農産物の表示については、1992年に「有機農産物等に係る青果物等特別表示ガイドライン」が制定され、96年に「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に改正され、現在に至っています。しかし、ガイドラインは強制力を有していないため、生産者が独自の基準に基づいて生産、表示しているものや、有機質肥料を使用しただけで 「有機栽培」とうたったものなど「有機もどき表示」の氾濫がみられます。また認証制度を行っているのは10都県の自治体だけで、国内で統一された制度はありません。そのため消費者の購入選択にも支障が生じ、消費者、生産者の双方から第三者機関による認証を受けた有機食品への要望が高まってきました。一方、アメリカでは州や民間団体などの認証機関の表示を付けたオーガニック食品が消費者の信頼を深めています。
有機食品検査認証・表示制度のポイント
 そこで、JAS法の一部を改正し、有機食品検査認証・表示制度が創設されました。対象とする食品は、有機農産物及びこれを使用した有機加工食品です。今回は有機農産物のみを対象としていますが、高温多湿で害虫被害の起きやすい日本では 「減農薬減化学肥料栽培農産物」も環境保全等の視点から見逃せないとし、有機畜産物や有機水産物とともに今後の検討課題になっています。
有機食品の検査認証・表示制度の基本的考え方
① 明確な基準に基づく国内統一的なもの
② 表示の適正化が図られるもの
③ 国際的規律と調和のとれたものであること
 を基本的考え方としています。
有機農産物とは
① 有機農産物は3年以上(この期間についてはコーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)との整合性を考え現在検討中) にわたって農薬や化学肥料を使用しない圃場で栽培したもの
② 遺伝子組み扱え技術で育成された品種の種子、種苗、作物体及び収穫物は使用しない。
有機加工食品とは
① 原則として製品中の農業由来原材料のすべてが有機農産物であること
② 加工法は機械的、物理的または生物的 (発酵、燻製等)加工法を用い、食品添加物の使用は必要最小限に限る
③ 非有機加工食品の製造と時間的、場所的に区別して製造するなどを定めています。なお、有機食品のマークについては、現在検討中です。また、「有機」と表示できるのは、第三者認証機関が認定した生産者が生産したものにのみ認められ、それ以外のものは「有機」表示ができないことになりました。
野菜
●諸外国の有機農産物制度の動向
 アメリカでは、90年に「オーガニック食品法」が制定され、施行規則案を告示して国内外から意見を求めて現在整理、調整中です。EU (欧州連合)では、91年「有機農産物に関する域内統一基準」 が設定されました。
コーデックス委員会においても「有機的に生産された食品の生産、加工、表示及びマーケティングのためのガイドライン」が畜産に関する部分を除き99年7月に承認されました。
認証制度と今後の課題
 今回の認証・表示制度は虚偽表示を排除するためには有効だが、有機農業を支える総合的な整備不足 (有機農業転換への技術の習得、転換期間中の減収に対する補償、病害虫に強い種苗の開発等)といった声もあり、今後の課題のようです。
  
国民生活センター『くらしの豆知識2000』 より





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