有機農産物表示制度はどう変わった

有機農産物特別表示ガイドライン改正の背景

有機農産物特別表示ガイドライン改正の背景

 農林水産省は1992年に「有機農産物等に係る青果物等特別ガイドライン」を制定しました。
 このガイドラインは、有機農産物、転換期間中有機農産物、無農薬栽培農産物、無化学肥料栽培農産物、減農薬栽培農産物、減化学肥料栽培農産物の六つに表示区分していました。
有機より無農薬のほうが安全? ガイドライン作成のおかげで、消費者や外食産業などの有機農産物への関心が高まってきたことも確かです。その一方で「表示区分が複雑で分かりにくい」 「有機より無農薬のほうが安全?」といった不満や誤認の声も強まってきました。
 そこで、農林水産省は96年、このガイドラインを「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」 に改正しました。

改正された新ガイドライン

生産管理要項 これは有機農産物(転換期間中有械農産物を含む)と特別栽培農産物(無農薬栽培、無化学肥料栽培、減農薬栽培、減化学肥料栽培)を明確に区分するためです。しかし、二つに統一したとはいえ実質的表示区分は改正前と同じ六項目です。ただし、農産物が表示と一致しているかどうか、栽培や確認の責任者の役割など生産管理要項は以前より細かく記載されました。
 なお、有機農産物(化学合成の農薬、肥料などの使用を中止してから三年以上を経過し、たい肥等による土づくりを行った農場において収穫された農産物)や、無農薬栽培農産物(当期作においてのみ農薬を使わなかったということであって前作までの農薬の使用状況は問われない農産物)などの定義の変更はありません。

有機農産物制度の地方自治体の動向

 旧ガイドライン策定以前に岡山県、熊本県、宮崎県綾町などは基準を作成したり、認証制度を実施したりしていました。
 東京都は96年8月に「有機農産物等流通指針」を発表しました。流通を促進するための具体的な方法の一つとして、「有機農産物等の認証制度等」を有する地方自治体との流通協定を挙げています。これによって信頼できる有機農産物等の流通の活性化が図られると考えられています。
 東京都の有機農産物等の栽培方法の範囲は、農林水産省ガイドラインを基本にしつつ、①A群/有機農産物(オレンジ)②B群/転換期間中有機農産物、無農薬及び無化学肥料栽培農産物、無農薬及び減化学肥卦栽培農産物、減農薬及び無化学肥料栽培農産物(ライトグリーン)③C群/減農薬及び減化学肥料栽培農産物(どちらも五割以上削減したもの。ライトブルー) の三種類に分け、出荷時に箱に張ったシールで色別表示を行っています。
色別表示 実際に店頭を見てみると、原則的にはガイドラインに沿った表示がなされていますが、販売業者独自の表示などさまざまな表示があり、分かりにくい状態が続いています。

諸外国の有機農産物制度と今後の課題

 アメリカでは、90年「有機食品生産法」を制定し全米統一基準ができ、EU(欧州連合)でも、91年「有機農産物に関する域内統一基準」が設定されました。
 コーデッケス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)においても、「有機的に生産された食品の生産、加工、表示及びマーケティングのためのガイドライン」が近々承認されそうだということです。
 このような動きから国レベルの公的認証制度を持たない日本も、早急に基準、認証制度を整備し、有機農産物等の生産、流通、消費の円滑化を図る必要があるという指摘がなされています。
国民生活センター『くらしの豆知識99』より





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