食中毒

 食中毒とは、人体に有害な細菌、化学物質、動植物の自然毒などが付着した飲食物を摂取した時に起る健康障害のことです。飲食による病気は、腸チフス、パラチフス、赤痢、コレラなどの消化器系伝染病があり、又、アレルギー、寄生虫等によっても発病しますが、これ等は食中毒には含まれません。食中毒は、嘔吐、下痢、腹痛、発熱等、急性胃腸炎の症状が急激に現れますが、殆どは軽度で、多数の人が一斉にかかりやすい点が特長です。
●細菌性食中毒
 食中毒の大半を占めるのは細菌性の食中毒です。これには、①食品に付着した細菌が食品中や腸で増殖して発病する感染型、②食品中で細菌が毒素を産出する為におこる毒素型とがあります。
 感染型の潜伏期間は12~24時間で、多くは38度前後の発熱を伴います。原因菌には、サルモネラ菌、陽炎ビブリオ菌、カンピロバクター菌、ウエルシユ菌、病原性大腸菌、セレウス菌、エルシニア菌等があります。
●サルモネラ菌(汚染卵)
 ネズミの排泄物や食肉、卵を媒介とし、寒さや乾燥に強い性質があります。症状は、汚染食物を食べた後、半日~2日後に吐き気やけいれん性の腹痛が生じます〔下痢(水様便)、38度前後の発熱、嘔吐など〕点滴や抗生物質の投与などで治癒します。
●腸炎ビブリオ菌
 生の魚介類や漬物を媒介とし、夏場がこの菌の要警戒期でしたが、現在では低温輸送法の普及により、大部減少しています。症状は、汚染食物を摂って10~24時間後に、さし込むような急激な腹痛、水様便(血便のこともある)、しぶり腹等がありますが発熱は殆ど伴いません。殆どは抗生物質の投与で治りますが、体力の低下した人や下痢の激しい人は、脱水症状の改善に気をつける事が必要です。
●カンピロバクター菌(ペットが盲点)
 牛や豚、猫、鶏など動物が下痢をおこし、その下痢便で汚染された食肉や牛乳をとおして人に感染し、中毒をおこすものです。症状は、腹痛以外に発熱もあり、下痢を伴わない場合もあります。1週間程度で回復します。マクロライド系の抗生物質が効果的です。
●ウエルシユ菌
 糞便、土、水中に広く存在します。学校給食のように、集団発生するケースが多々あります。この毒素には100度以上の耐熱性を持つものがある為、煮沸で防げない場合があります。症状は軽い腹痛程度ですが、時にはひどい下痢や腹部のつっぱり感などもあります。しかし、殆どはペニシリンなどの抗生物質の投与で治ります。
 毒素型は数時間で症状が現れ、普通発熱は伴わず、あっても微熱程度です。原因菌にはブドウ球菌、ボツリヌス菌などがあります。
●ブドウ球菌(手指の傷や化膿部分から汚染する)
 病原性をもつブドウ球菌は、どこにでも存在しており、健康な人でも皮膚や鼻腔から20~30%の割合で検出されます。汚染された食物中でこの菌が作り出した毒素(エンラロトキシン) が、腸管で吸収された時生じます。作られてから時間の経った食物などを媒介とします。
 感染は、殆どの場合、調理者の手指からです。特に、手指に傷や湿疹があったり、化膿しているような場合は、食物を汚染する確率が高くなります。症状は、悪心(吐き気)、嘔吐に始まり、腹痛や下痢を伴います。発熱はありません。総じて症状は軽いようですが油断は禁物です。
●ボツリヌス菌(強力な毒素を発生する)
 ハム・ソーセージ類、いずし、すじこなどを媒介とします。食品衛生の向上により最近では減少しています。この毒素は熟に弱く、80度・30分間の煮沸により菌は死滅します。症状は、軽度の吐き気や嘔吐に伴い、ものが二重に見えたり、まぶたが下がる、言葉が出にくくなる、飲み下し困難などの症状がでます。発熱はなく意識もしっかりしているため、つい見逃され、抗毒素の投与時期を逸すると死亡する危険も高く怖い食中毒です。
●他の原因による食中毒
●化学物質水銀等、化学物質による慢性中毒、食品添加物による残留農薬
◎自然毒
*動物性 フグ (テトロドトキシン)、カキ、アサリ(産卵期のみ毒性)
*植物性 毒きのこ、山菜、じゃが芋の新芽(ソラニン)、青梅の青酸中毒

食中毒を防ぐ基本原則

①夏場は生水、生物をなるべく避ける。
②食材は常に新鮮なものを選び、低湿(4度以下)で保存する。
③手指に傷のあるときは、食物が直接傷に触れないようにする。
④食べる前にはよく加熱し、調理後は早目に食べる。
⑤まな板やふきんはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌し、よく乾燥させておく。
⑥手洗いを励行する。
⑦冷蔵庫を過信しない事。温度管理とともに定期的な掃除も大切。





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