食中毒に気をつけて

◆食中毒発生の多いもの

 近年の食中毒発生状況を見ると事例数、患者数とも常に腸炎ビブリオ食中毒とサルモネラ食中毒がトップを競っています。特に、ここ数年は腸炎ビブリオ食中毒の発生が激増しています。腸炎ビブリオは沿岸海水中に生息しているので、そこで捕れる魚介類は腸炎ビブリオに汚染されており、夏期には汚染率が高くなります。サルモネラ食中毒は一九八八年に激増しましたが、これはサルモネラ・エンテリティディスに汚染された輸入ヒナが原因となった、汚染鶏卵によるものです。鶏卵以外にも牛、鶏、豚などの食肉、臓物や加工品も汚染源となります。
 近年、事例数では腸炎ビブリオがやや上回ることもありますが、患者数においてはサルモネラが大きく引き離しています。このことは最近のサルモネラ食中毒の一件あたりの患者数が極めて多く、その発生規模が大型化していることを示しています。
 腸炎ビブリオ食中毒の発生は七、八月に集中し、特に八月がピークですが、その発生は比較的小規模です。他方、サルモネラ食中毒は年間を通して発生していますが、やはり夏場に多く、かつ大型の事例がしばしば見られます。

◆おもな症状

速やかに医師の診断を 腸炎ビブリオ食中毒の主症状は激しい下痢と耐え難い腹痛です。また、サルモネラ食中毒のそれは腹痛、下痢、発熱ですが、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。高齢者や小児では重篤になることがあるので、速やかに医師の診断を受けてください。

◆原因菌の性格と弱点

 腸炎ビブリオは好塩菌で、3%食塩濃度で最もよく発育します。サルモネラは乾燥や酸に強いので、さまざまなところで生きることができます。腸炎ビブリオの世代時間(一個の菌が二個になる時間) は八、九分で、サルモネラ(一五分)と比べかなり短く、増殖が極めて速いのが特徴です。両者とも10℃以下では発育せず、熱には弱く、煮沸で瞬時に死滅します。

◆食中毒事件と学校給食

 これまで500名を超す大規模食中毒には学校給食による事例が多く見られ、特に1996年に勃発した腸管出血性大腸菌0-157事件以来、その対策が講じられてきましたが、いまだ十分とはいえないとの指摘がなされており、給食施設や設備の改善及び給食全体へのHACCPシステムの応用などの抜本的な変革を迫られています。
まな板

◆食中寺を予防するために

①調理に使用したまな板、包丁、ふきん、スポンジなどは汚れを洗い落とした後に、熱湯などで消毒し、十分に乾燥し、清潔に保管する。
②まな板は食材ごとに使い分けする。
③食材は流通、保存時を通じて4℃以下に保存する。
④飲食店や家庭では調理したものは冷蔵保存下を出てから可能な限り速やかに (最長2時間)消費すること。
⑤食品相互の汚染防止など食品衛生的な取り扱いを行うこと。
⑥加熱調理するものは十分な加熱(中心部において、牛肉、豚肉、鶏肉などでは75℃で1分以上、蟹などでは65℃で1分以上茄でる)をする。
国民生活センター『くらしの豆知識2001』 より





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