タバコの害の再認識

 厚生省は今年2月下旬、タバコが原因とみられる肺癌等の癌や、心臓病などで死亡する人が増えているため、また受動喫煙や嫌煙権も社会問題となっており、このため専門家による検討会「21世紀のタバコ対策検討会」を発足させることとなりました。
 この主旨は喫煙を個人の問題ではなく、国民の健康という視点から対策を検討することです。現在タバコが関係してるとみられる病気にかかる医療費は国民医療費のおよそ5%に当たる1兆2000億円になっています。タバコの害対策のようやくの一歩前進であり、今回、以前よりいわれているタバコの害について、現在の実態を再認識しょうと思います。
肺ガン死亡率の増加◎肺ガン死亡率の増加
 現在タバコを吸う人は、我が国では成人男性は比率が若干下がっていますが、米国(28%)、英国(35%) やスエーデン (24%)に比べていまだ高く52%もみられ、残念なことに未成年や若い女性の喫煙率は高くなる傾向にあります。そして肺癌死亡率は確実に増加しています。
◎煙のなかの有害物質
 タバコの煙の中には、発癌物質をはじめとする約二百種類もの有害物質が含まれています。その主たるものはニコチン、タール、一酸化炭素などです。ニコチンは中枢神経を刺激して、心拍数を増やし、血圧を上げ、末梢血管を収縮させ、長期では精神神経系の働きを抑え、依存性があります。タールは種々の発癌物質を含み、一酸化炭素は酸素の運搬を妨害し、細胞を障害します。そしてタバコを吸う人の平均寿命は2年から6年短くなり、タバコ1本当りが20から30分寿命を縮めるといわれています。
臓器への影響◎臓器への影響
 タバコの害は、癌の発生率の上昇をはじめとして多くの臓器にみられます。主なものを次に述べます。
 癌の死亡率は全癌では非喫煙者の1.7倍であり、頻度の高いものは喉頭癌の32.5倍、肺癌の4.5倍をはじめとして咽頭・口腔癌、食道癌、胃癌、膀胱癌、膵癌、肝癌、子宮頸癌などがあります。そしてタバコの本数が多いはど、年数が長いほど死亡率が上昇します。
 呼吸器系では、肺癌発生のほか、タバコを吸い込む通路であるため咳や痰を訴えることが多く、慢性気管支炎や肺気腫、それに肺線維症を発生、進行させ(死亡率2.2倍)、気管支喘息を悪化させます。最終的には易感染や呼吸不全の状態となります。
臓器への影響 循環器系では、タバコは動脈硬化を促進し、狭心症や心筋梗塞を誘発し、これらの発症における大危険因子の一つです。また善玉コレステロールも低下させ、高血圧、脳卒中、動脈瘤やバージヤー病などの末梢血管閉塞症の発症にも関与しています。さらに糖尿病での腎症、血管障害や網膜症の合併症を悪化させます。
 消化器系では、タバコは食道癌、胃癌、膵癌などの死亡率上昇があり、さらに慢性萎縮性胃炎をおこしやすく、癌発生の誘因となります。また胃・十二指腸潰瘍の原因でもあり、潰瘍の死亡率や再発率が高くなります。肝硬変でも悪化の原因の一つです。
 その他、アルツハイマー型痴呆、骨粗鬆症、外科手術の予後不良、皮膚の荒れなどとの関係も指摘されています。
副流煙の有害物質は3倍◎副流煙の有害物質は3倍
 最近、嫌煙権という言葉をよく耳にします。実際タバコでは点火部よりの副流煙には主流煙の3倍以上の種々有害物質が含まれています。
 そして受動喫煙により女性の肺癌では2倍の発生率があり、赤ちゃんでは発育障害や呼吸器障害がみられます。さらに心臓発作を誘発させやすく、室内がヤニくさく汚れ、頭痛やのどの痛みをみることもあります。
妊娠・授乳中の喫煙◎妊娠・授乳中の喫煙
 母体である女性の喫煙が妊娠や分娩や授乳などを通して子供にも悪影響を与えることも知られており、これには流産、早産、不妊、早期破水、周産期死亡率上昇、低体重児、呼吸器障害などがあります。そしてニコチンは母乳中へ移行するといわれています。
◎未成年者の喫煙
 未成年者の喫煙はより肝臓障害が強くなり (虚血性心疾患は死亡率10倍以上)、癌の発生、死亡率も助長します(癌発生率4.5倍)。この結果総死亡率も3.8倍と高くなります。さらに身体発育の大きな妨げとなり、ニコチン依存になりやすく、開始年齢が若いほど癌や虚血性心臓病になりやすいとされています。
禁煙の効果◎禁煙の効果
 禁煙の効果はどんな人にもすぐ現われ、時間がたつと確実なものになります。主なものに、咳や痰がとまる、少しの運動では息切れがしなくなる、食欲がでる、朝のめざめがよい、末梢の循環がよくなるなどです。フラミンガム研究では脳卒中は2年で、心臓病は1年で非喫煙者とほぼ同様の危険率に下がり、肺癌は禁煙5年で死亡率が半分以下に、10年で3分の1に減少し、非喫煙者の1.4倍となります。
 禁煙の実際では、タバコを吸いたくなったら、深呼吸をする、水を飲む、歯を磨く、散歩や軽い運動をする、好きな音楽鑑賞や趣味を行う、あめをなめたりガムをかむなどがあります。最近、禁煙の手助けとして、ニコチンガムの使用も試みられています。どうしてもだめな人やニコチン依存症の人は一回試みてください。
 以上から、タバコは人体にとって百害あって一利なしの代表といえ、本人だけでなく、家族や一般社会人のためにも禁煙が望まれます。今からでも遅くはありません。
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