歯周病予防と口腔保健

◆歯周病とは

 日本歯科医師会はかねてから、80-20運動を展開しています。これは、高齢化社会の中で八〇歳に至っても、入れ歯でなく自らの歯を二〇本は残して、食生活を中心に健康生活の維持を図ることを願ってのキャンペーン活動です。
 これを可能とするためには、歯の喪失を防がなくてはなりません。歯をなくす原因疾患は、中年以降では歯周病がトップとなつています。
 歯周病とは、歯肉、歯根膜、セメント質、及び歯槽骨(歯を支えている骨) からなっている歯周組織に起こる慢性の感染症です。当初は歯肉炎で始まり、やがてゆるやかな進行のなかで歯周炎に移行し、そのまま放置していると歯がぐらつき、抜歯を余儀なくされます。

◆歯周病の怖さ

歯周病 歯周病の怖さは歯を失うことで、八〇歳で二〇本の歯を残すという目標がかなわず、せっかくの食事もおいしく食べられなくなってしまうことにあります。
 加えて歯周病の怖さは、このような局所の障害にとどまるだけではなく、実は全身に大きな影響を及ぼし得るという点についても、注目しておかねばなりません。日本口腔健康医学会では、日本人の成人の約八五%が軽症も含めた歯周病に冒されているとし、アメリカなどでの研究成果も踏まえて歯周病の人は、そうでない人に比べ、致命的な心臓病を引き起こす危険が約二・八倍、脳卒中も約三倍、そして妊娠に際しては早産の確率が七・五倍高いなどとし、歯周病が全身的に各種の疾患を引き起こす危険因子であることに、警告を発しています。

◆歯周病予防のポイント

 歯肉炎から歯周炎と移行していく歯周病では、さまざまな症状が見られます。歯肉炎によるものとしては発赤、腫張、出血、排膿、それに伴う口臭などです。そして歯周炎の段階では、歯周ポケットの形成、歯肉の退縮、歯槽骨の吸収に伴う歯の動揺などがその典型例です。なお、これらの症状は喫煙によって増悪されます。
 予防は、このような症状の有無をチェックし、これらが起こらないようにすることにあります。そのポイントは、歯周病を引き起こす最大の原因であるプラーク (歯垢) をためることなく、歯周組織を常に清潔に保つことにあります。その手段がプラークコントロールと呼ばれ、正しい歯磨き(ブラッシング)、デンクルクロスや歯間ブラシの有効利用、そして定期的な歯石のチェックとその除去にあります。
積極的に予防

◆口腔健診のすすめ

 現在、四〇歳以上、特に四〇代、五〇代において歯周病を有する者の割合について、静岡県富士宮市モデル事業の成績は、それぞれ三二%、四七%としています。二〇〇〇年度から始まった「健康日本21」では、四ミリメートル以上の歯周ポケットを持つ者の割合を、現状に対して、三割以上は減らしたいとしています。
 そのためには、定期的な口腔健診とともに、歯肉炎や歯周炎をともに軽症で発見し、これを積極的に予防するという、口腔保健対策が欠かせません。これには喫煙習慣を断つこと、そしてたとえ自覚症状がなくとも、年に最低二回は歯科を受診し、歯石のチェックやその除去を図ることが勧められます。




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