男性にもある更年期障害

男にも更年期障害がある?

 女性と同様、男性にも更年期障害は発症し得ます。
 男性の更年期障害は、早い人では四十歳くらいからはじまり、四十五歳から五十歳くらいの間にもっとも多く見られます。
 男性の更年期障害も女性と同様、「血管運動神経症状(動悸・のぼせ・顔のほてり・冷えなど)」「精神神経症状(不眠・不安・頭痛・うつ傾向など)」「知覚異常症状(しびれ感・知覚鈍麻など)」といった障害が多く見られ、さらに「性機能症状(性欲の低下・勃起不全など)」がそこに加わります。
 これらの更年期障害を発症させる最大の原因は、ホルモンのバランスの崩れであるとされています。

更年期のホルモン減少

 卵巣ホルモンの「エストログン」が女性に更年期障害を発症させるのと同様、男性の場合は精巣ホルモンの「テストステロン」が更年期障害を発症させるとされています。
 この精巣ホルモン 「テストステロン」を、通常の場合、男性は女性の10倍から20倍のレベルで持っています。ただし、このテストステロンは、二十代から三十代の時期をピークに、加齢につれ次第に減少してきます。
 若い男性であれば、血液中におけるテストステロンの値は、1ccあたり30~43.5pgですが、この値は、五十歳前後では16pgくらいにまで低下してきます。この程度の数値であれば、目立った不調も起こりませんが、この値がさらに下がってしまうと、日常生活にさまざまな支障を及ぼす症状が出てきます。
 こうした変化には個人差があって、誰もが四十代半ばにこのような症状を発するわけではありません。
 男性の更年期は「生殖期と生殖困難期の間の移行期間」、すなわちテストステロンの減少していく期間です。このテストステロンがもともと少ない人や、減少の程度が穏やかな人であれば、不調や障害がでることも少ないのですが、仕事での重大な失敗や家庭環境の大きい変化によって強いストレスを受けたときなどに、急にテストステロンのレベルが下がってしまうと、自律神経や泌尿器系にさまざま
な症状があらわれるのです。

更年期障害を発症しやすい人

なりにくい職業 更年期障害を発症しやすい人を順に挙げてみますと、
  ①ストレスに弱い人
  ②神経質で真面目な人
  ③自律神経が不安定な人
  ④管理職になっている人
  ⑤銀行員や税理士などの職業の人
  ⑥事務系で細かい仕事が主な人
  ⑦人付き合いの下手な人
  ⑧生きがいや趣味の少ない人
  ⑨くよくよ考え込む人
  ⑩通勤時間が長い人
となります。
 行動パターンで分けると「責任感や競争心が強く、几帳面またはせっかちで、成功への欲求を持っている人」が更年期障害の発症しやすい人、逆に「ゆっくりマイペースで精神的に落ち着いている人」が更年期障害の発症しにくい人といえます。

男性更年期障害と勃起不全・勃起障害(ED)の関係

 男性更年期障害で顕著なのは、セックスヘの興味の減退と、性的能力の低下です。
 ただし、勃起不全・勃起障害は非常に広く見られる病気で、その原因は更年期障害であるとは限りません。
 具体的には、更年期障害の他に、
  ①糖尿病・高血圧症・心臓病・高脂血症
   (陰茎の血管に影響を及ぼし、十分な血液が流入しないため)
  ②前立腺の手術や脊髄神経のケガ・外傷の結果
   (中枢神経と陰茎の神経のつながりに影響するため)
  ③勃起不全を引き起こす薬物
   (一部の降圧剤やうつ病治療薬などの副作用として)
  ④喫煙・飲酒などの生活習慣から
などといった原因が考えられます。
 よって、勃起不全・勃起障害になっていることが判明しましたら、「更年期障害によるもの」と安易に決め付けることはせず、詳しい検査を受けることが大事です。
 現在では、勃起不全・勃起障害は治療可能な症状です。原因となる疾患をきちんと治療し、またカウンセリングにより勃起不全・勃起障害の原因を明確にし、ホルモン剤やパイアグラ、漢方などを適切に用いれば、男性機能を取り戻すことは決して難しいことではありません。

更年期障害の発見

 男性更年期障害も他の疾病と同様、早期発見に努めることが大事です。ここでは、男性更年期障害(および男性更年期障害に似た症状をもつ重度の疾病)を早期に発見することのできるいくつかの検査を紹介します。
 ①MRIによる脳と脳血管の画像診断
  自律神経の症状が、微少脳梗塞や脳動脈瘤などの脳の病気から発症していないかを確認します。
 ②MRIで前立腺と尿道の状態を画像診断し、触診をおこない、尿と血液の検査を行う
  頻尿や精力減退が、前立腺などの泌尿器の病気から発症していないかを調べます。
 ③睾丸から分泌されるホルモンの減少量を調べる
  フリーテストステロン(活性型男性ホルモン)を調べ、男性ホルモン補充療法が必要かどうかの目安にします。
 五十歳前後で男性更年期障害と思われる症状が出た方は、一度医師による検査を受けることをお勧めします。

日常生活でできる更年期障害対策

 更年期障害を発症していることが判明しましたら、それまでの生活を見直していくことが大切です。
 更年期を乗り切る日常生活のポイントを挙げてみます。

 ①食生活

 栄養のバランスのとれた食事が第一ですが、ヤマイモ・オクラ・納豆・ナメコなど、「粘々した食品」摂ると効果的です。特にヤマイモは男性機能の回復や前立腺の柔軟化、頻尿の改善などに効果があります。
運動

 ②運動

 肥満は高血圧・動脈硬化・糖尿病・高脂血症といった生活習慣病(成人病)を誘発するだけではなく、テストステロンも低下させてしまいます。「月に一、二回のゴルフ」だけではなく、色々な運動を組み合わせてするようにしてください。特に水泳やテニスといった全身運動は、脂肪を減少させるだけでなく、心肺機能やテストステロン活性の維持にも適しています。運動をする時間をなかなかとれない人は、エレベーターやエスカレーターを利用しないなど、なるべく歩くよう心がけてください。

 ③睡眠とアルコール

 更年期障害の出た男性の中には、「眠れない」 「長い睡眠をとっても疲れがとれない」 といった症状が出てくることがあります。これは、睡眠時は交感神経が休み副交感神経が少し働いた状態が理想であるのに、更年期障害によって、自律神経の働きが悪くなった結果、交感神経が睡眠中に休めなくなってしまったことが原因です。
 アルコールを飲んで寝た場合にもこれと似たことが起こります。アルコールを飲んで寝た場合、交感神経も副交感神経も休んでしまい、目覚めのときには交感神経と副交感神経の両方がおきてしまう、といった現象が起こります。自律神経の調整のために、アルコールで眠る習慣は止めるようにしましょう。
 更年期障害は、時間が経てば必ず症状が治まってきます。あまり深刻に考えることなく、生活習慣の見直しやちょっとした工夫で、上手に更年期を乗り切ってください。




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