高齢者のうつ病 痴ほう症

うつ病や痴ほう症は自分自身の問題

 高齢社会を迎えた日本にとって、痴ほう症対策は最も重要で深刻な問題となつています。
 厚生省によると、1990年の時点で、65歳以上の人に占める痴ほう性老人の割合は6.8%(約100万人)に達し、高齢化が進むと割合は更に上昇すると考えられます。しかも、85歳以上では、男性の22%、女性の30%に痴ほう症状が見られるといわれていますから、他人事ではなく自分自身の問題としてとらえることが必要です。

痴はう症を理解する

 痴ほう症の主な症状は、ひどい物忘れ、家族の顔すら忘れてしまう失認、俳徊、夜間不眠、金銭・物に対するひどい執着、物取られ妄想、簡単な日常生活すらできなくなる失行、失禁など、きわめて多彩です。このような症状を示すお年寄りに対して、家族は一生懸命に介護にあたるのですが、痴ほう症のお年寄りの特徴を理解しないと混乱が深まるばかりです。症状を正しく理解して、割り切りながら介護を続けるのがコツです。

痴ほう症状の特徴

老夫婦(「ぼけの法則」)
 身近な介護者に一番ひどい症状を示す (「症状の出現強度に関する法則」)ため、まわりの人たちは、介護者の本当の苦労が分からない、自分にとって不利なことは認めないで平気でうそを言う (「自己有利の法則」)、過去に向かって記憶を失っていき、最後に残った世界がそのお年寄りの現在の世界になる(「記憶の逆行性喪失」)しっかりした部分と痴ほう症状が混在する (「まだらぼけの法則」) ため痴ほう症状ととらえられず混乱する、一つのことにこだわり続け (「こだわりの法則」) 説得や禁止は介護の混乱を強めるだけといったような特徴を早くから知り、デイサービスやショートステイなどの福祉制度をうまく使って介護の負担を軽くすることが大切です。介護者に余裕ができると、お年寄りの症状もよくなるからです。
 大規模な施設での画一的な処遇では、痴ほう症の高齢者は混乱し症状が悪化することもまれではありません。家庭に近い雰囲気で6~8名をケアすると痴ほう症状が大変落ち着くことが知られています。このグループホーム・ケアが注目され、国は98年度、全国41ヵ所に補助し、いくつかの自治体でも助成を始めました。

痴はう症の原因

 高齢者の痴ほう症の原因としては、脳の血管が詰まったり破れたりする血管性痴ほうと、老化により脳が萎縮して起こるアルソハイマー型老年痴ほうが原因の約九割を占めています。そのほかとして、脳と頭蓋骨の間に血液がたまる慢性硬膜下血腫、脳脊髄液が脳室にたまる正常圧水頭症などがあります。老人と子供これらは早く診断して治療すれば症状が改善する場合もありますから、専門医の診療を受けたいものです。

うつ病・うつ状態の症状と対策

 痴ほう症の症状と間違えやすいのが老年期のうつ病です。何事に対しても意欲が低下し、悲観的になる、とりとめのないことを言うなど、痴ほう症の症状とよく似ていますが、記憶力などの知的機能は落ちていないのが特徴です。うつ病は治療によってよくなる場合が少なくないので、年だからとあきらめないで、早めに受診しましょう。




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