視力低下と目の異常

目の構造から見た視力低下の原因

 目の構造は、よくカメラに例えられます。レンズは水晶体、これを覆っている角膜、そして光を通す部分は硝子体、映像はフィルムに相当する網膜でとらえられます。その中心が黄斑部です。視力低下は、これらにおける病的な変化が原因で起こってきます。
 その典型例は、水晶体に濁りが生じた場合や、フィルムに相当する網膜に、損傷や変性が起こつた場合で、いずれも高度の視力低下を来すようになるという怖さがあります。

レンズが曇る白内障

眼科医 年をとると、だれもがかかる可能性のあるのが白内障です。白内障はレンズにあたる水晶体に混濁が生じた状態で、ちょうどレンズに曇りが生じたのと同様だといえます。
 水晶体は、たんばく質と水から構成されています。このたんばく質には、水溶性と水不溶性のものがあり、水晶体の透明性は水溶性たんばく質によって維持されています。四〇代から見られる老眼は、水不溶性たんばく質が増加し、水晶体の弾力性が失われ、調節力が減退した結果です。白内障の人は、この状態にプラスして高分子の凝集体が形成され、光がうまく通過できない状態だといえます。

網膜を損傷する糖尿病

 糖尿病があって血糖コントロールが適切にされていない場合には、目や腎臓、そして神経に合併症が起こつてきます。目の場合には、その変化が網膜に起こり、フィルムに相当する網膜が広範囲に損傷されるようになります。
 現在、中高年者における失明原因のトップは、糖尿病網膜症によっています。網膜症による失明を防ぐには、高血糖を持続させないように、適切な血糖コントロールを恒常的に維持することです。その目安は空腹時血糖値120mg/dl以下、血糖マーカーであるヘモグロビンA1C 7%以下です。

増えている老人性黄斑変性症

 六〇代は当然のこと、七〇代でも日常的に車を運転する人は決して少なくありません。車を運転する場合、免許更新には0.7以上の視力が必要です。新聞を読んだり、パソコンの画面を見たりするためには少なくとも0.4以上が必要です。
 しかし、高齢になるにつれて、視力の低下を来す原因が、さまざまな形で見られるようになるため、ことは重大です。
 このような状況のなかで白内障は手術で、糖尿病網膜症は良好な血糖コントロールで、それぞれ視力の維持が可能ですが、老人性黄斑変性症は治療の施しようがないという点で、現在六五歳以上の失明原因のトップになつています。老人性黄斑変性痘では、周囲は見えるが、視界の中心がぼんやりとしたり、視野の一部がスッポリと抜け落ちたりするのが典型的な症状です。
禁煙 この病変が引き起こされる要因のひとつとして、長期の喫煙習慣がクローズアップされています。喫煙は肺がんの危険因子であるばかりでなく、このように光を失う要因でもあります。年をとって見えにくくなってきたのは、老眼のせいだといった安易な対応は、この病気の早期発見の機会を逃してしまいます。矯正をしても裸眼視力が0.7以下の場合には、新聞など片目で見て文字がゆがんだり、ぼやけて見えないかをチェックし、異常に気付いたら眼科の受診を心掛けましょう。




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