内臓脂肪型肥満に気をつけよう

 肥満は、男女を問わず多くの人の関心事です。長い人類の歴史のなかで身体に脂肪を蓄積できるという能力は、飢餓と常に向かい合っていた時代には優れた生存能力のあかしでした。しかし現代社会は、豊富な食糧供給と機械化などによる運動不足がごく当たり前になつてしまい、エネルギー量の過剰な備蓄、すなわち体脂肪組織の過剰蓄積(肥満)を招く結果となつています。
運動不足●気になるウエストサイズ
 肥満の判定は、体重kg÷身長m÷身長mという算出式で求められる体格指数 (BodyMass Index.BMI)によって行われています。これの標準値は。健康体重と目される範囲は22±2です。日本肥満学会は、BMI26.4以上を明らかな肥満と判定しています。
 しかし、このようにして肥満を判定したとしても、多くの人について体脂肪組織の分布を子細に観察すると、身体のどこに脂肪が蓄積しているかによって病気へのかかりやすさなど、身体への影響に違いがあることが明らかになってきました。
肥満体型 狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを来す動脈硬化の原因疾患として知られる高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などは、生活習慣病の代表的な疾患です。
 このような病気にかかりやすい体型として、今、内臓脂肪型肥満が注目されています。このタイブの肥満は見た目からすると、お腹まわりが太つている上半身肥満で、典型例では、ウエストサイズがヒップサイズを上回り、俗に「ベルトの穴が一つ増すと寿命が10年短くなる」を証明してくれる肥満だといえます。
死の四重奏●有用な腹部CT検査
 中年太りを実感している向きでウエストサイズが増えてきているようでしたら、ぜひ、内臓脂肪型肥満の有無を確認されることをお勧めします。
 これには臍部の高さでの腹部CT検査が有用で、これによって腹部における体脂肪の蓄積具合が内臓脂肪型か、皮下脂肪型かが区別されます。同じBMIであっても、内臓脂肪型肥満を呈しているものでは皮下脂肪型肥満に比較して、前述の病気にかかる頻度が明らかに高いことが示されています。
内臓脂肪型肥満●要注意-死の四重奏
 お腹まわりが太くなる、いわゆる中年太りの内臓脂肪型肥満では、すい臓で作り出されているインスリンというホルモンの働きが出にくいなど、インスリン抵抗性が生じやすくなり、血中インスリンが高くなつてきます。その一方で、これにプラスして軽度の高血圧、そして高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症などの血液脂質異常も合併しがちです。
 これらの要素は相まって、動脈硬化を促進させやすいところから「死の四重奏」と呼ばれています。この四重奏団の第一バイオリンと目される内臓脂肪型肥満の予防のためには、腹七、八分目で栄養的にバランスのとれた食生活と、歩行(一日7000歩以上)を中心にした運動のある生活が欠かせないことをご承知ください。



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